高大連携

黒坂 真

高等学校での模擬講義・内容詳細

テーマ経済発展と貧しさを考える
担当教員黒坂 真(経済学部 経済学科)
講義内容ある国や社会、人びとがなぜ貧困なのか、あるいはなぜ豊かなのかを探求することは、経済学の極めて重要な課題である。国と社会が貧しい時代には、親は生き のびるために、子供を売り飛ばしてしまうことがある。子供を売ること、あるいは子供にとてつもない重労働をさせることは、発展途上の段階にある国や社会で は普遍的な現象である。山崎豊子の傑作「大地の子」には、中国東北部に残っていたの習慣が出てくる。これは、農家が幼い女の子を将来、息子の嫁にするため にどこかから買って育てる習慣である。中国の農村では戸籍に入れない子供がいる。戸籍に入っていなければ学校にも行けず、普通の職にはつけない。

経済学はこれらを理論的に分析せねばならない。親が薄情だからとか、血も涙もない親だとかいう問題ではない。農民は子供を売らなければ一家全員餓死してし まうような、どうしようもない貧しさにあったのだ。人々の経済的な行動がどのような計算、見通しに基づいて実行されているかを分析、解釈することを、経済 学では「ミクロ的基礎を考える」という。発展途上国に広範に見られる「子供売り」「子供労働」現象を分析する経済学の一分野をEconomics of Child Labor、「子供労働の経済学」とよぶ。この分野では、どのような条件のもとで、親は子供を働かせるのかということを数式で定式化する。親はある特定の 生活水準が、親だけの賃金で得られるならば、子供を働かせることはしない。ある生活水準が親だけの賃金では実現できず、子供を働かせることにより子供が得 る賃金で、その生活水準が達成されるなら、子供を働かせる。どこの家計もそうした選択をすれば、働きに出る子供の数が増えるので、親と子供の賃金は低い水 準に留まる。

人は自分の利害や満足度を重視して行動する。人間のこうした行動を定式化して、人々が行動し、取引をした結果、ある特定の状態が達 成され、賃金や所得、雇用などがある水準に決定されることを、経済学では「均衡」という。発展途上国では「子供売り」「子供重労働」、豊かな国では親だけ が働くことが均衡になっていると経済学者は解釈する。ある時代、ある社会に普遍的に存在する現象は、何らかの形での、人びとの合理的な判断と行動の結果な のである。「子供売り」の均衡から、どのようにして親だけが働くような均衡に日本や韓国などが移行してきたかを考えることは、経済発展論の重要な課題である。