日本経済史研究所

杉田 武志(情報社会学部教授)

杉田武志所員

〔専門分野〕 会計学

〔研究課題〕 1719世紀イギリス東インド会社の簿記会計の研究

〔研究目的〕 世界史にも名を残した貿易商社のイギリス東インド会社(1600-1874年)は、世界で2番目に古い株式会社(株式会社化は1662年)ということもあり、経済史、経営史研究の領域では数多くの先行研究が蓄積しています。他方で、会計帳簿などの膨大な会計に関する史料が現存しているものの、会計史の領域ではそれほど研究が進められてきたとはいえません。残された史料からは東インド会社の会計は株式会社会計の萌芽ともいえる様相が見て取れます。そこで、同社における会計の全体像を明らかにすることを目的として研究を進めています。

〔最終学歴〕 神戸大学大学院 経営学研究科

〔取得学位〕 博士(経営学)

〔研究業績〕 本学のデータベースはこちら

<共著>
『新版 現代会計用語辞典』(税務経理協会、2016年8月)


『新会計基礎論』(森山書店、2016年3月)

『全経 簿記能力検定試験 2級(商業簿記)標準テキスト』(税務経理協会、2014年9月)

<論文>
「18世紀中葉イギリス東インド会社における報告書と複式簿記の関係
 -Stock per Computationに伴う財産有高報告書(1763年)と帳簿記録を中心として-」
(『簿記研究』(日本簿記学会)、第1号(査読有)、2018年)

「株式会社の登場と会計報告の始まり:イギリス東インド会社にみる貸借対照表の萌芽」             (『企業会計』第70巻第1号、47-54頁、2017年12月)

18世紀前半イギリス東インド会社における海外商館への商品輸出に伴う会計処理―Charges in India勘定に関する検討―」(『大阪経大論集』第67巻第1号、35-58頁、20165)

Statement of Financial Position of the British East India Company in the mid-18th century: "Stock per Computation" of 1757
Osaka University of Economics Working Paper Series 2015-420163月)

17世紀後半イギリス東インド会社における商品輸出の会計処理―商品輸出に伴う取得原価への利益の上乗せ―」(『産業経理』第75巻第3号、152-163頁、201510)

「一七世紀後半ロンドン東インド会社における財務報告―資本評価と複式簿記の関係―」
(『會計』第186巻第3号、52-66頁、2014年9月)

「一七世紀前半ロンドン東インド会社の監査人に関する史的考察」
(『會計』第184巻第2号、205-219頁、20138月)

17世紀ロンドン東インド会社における複式簿記導入の目的」
(『日本簿記学会年報』第76巻第27号(査読付)、95-105頁、2012 

「一七世紀イギリス東インド会社の会計帳簿の実証分析―売残商品の売価評価とその背景―」
(『會計』第178巻第1 32-46頁、20107月)


「株式会社における内部監査の起源に関する考察―17世紀ロンドン東インド会社の監査の仕組み―」
(『広島経済大学経済研究論集』314号、177-195頁、20093月)

「イギリス東インド会社会計史研究―17世紀ロンドン東インド会社の会計事情―」
(博士学位請求論文(神戸大学)、2008年)

「株式会社の起源―イギリス東インド会社と南海会社―」
(中野常男, 清水泰洋編著『近代会計史入門』、同文舘出版、153-176頁、2014年)

"The British East India Company's Market Valuation in the 17th Century (1664-1694)"Fair Value Accounting in Historical Perspective, Moriyama Shoten, pp. 109-129, 2014

17世紀における時価評価の実態―イギリス東インド会社の時価評価実務(16641694)―」(渡邉泉編著『歴史から見る公正価値会計―会計の根源的な役割を問う―』、森山書店、97-120頁、2013年)


〔今後の研究計画〕
 これまでは主に17世紀‐18世紀前半におけるロンドン本社の会計帳簿、会計関連史料、本社議事録等の分析を中心に分析することで、同社の会計・監査の仕組み、導入された複式簿記、財務報告、資産評価(棚卸資産評価)などの研究に取り組んできました。これらの研究成果は、株式会社会計の萌芽(株式会社会計の発生)を明らかにするという観点で簿記・会計史研究の空白を埋めてきたと考えています。
 現在は、東インド会社が関わった東インド貿易やインド統治などのテーマについて会計的側面よりアプローチすることにも関心があります。周知のように、東インド貿易を牽引した存在でもある同社は、17-19世紀当時の世界的なリーディング・カンパニーの一つともいえるでしょう。当時の大英帝国の発展にも、東インド貿易などを通して少なからず影響を与えていると思われますので、経済史における東インド会社の役割、位置づけを、会計という側面から検討していきたいと考えています。
 具体的には、これまで先行研究でもあまり光が当てられてこなかったといえる、東インド会社の会計と私貿易(Private Trade:船舶関係者などが自分たちの利益のために会社の船舶に積荷を積み込んで貿易を行うこと)、戦争などの問題というテーマに取り組んでいくことができればと思っています。とはいえ、当時の膨大な史料を読み解いていくことや歴史的背景の理解は、私にとって、そう容易い作業ではありませんので、長期的な研究計画を念頭においています。まだまだ解明されていない点が多い東インド会社の会計を研究(当時の会計の役割を解釈)していくことは私にとってライフワークのようなものかもしれません。
 なお、今年は英国での在外研究を予定しておりますので、これまでの研究成果を発信することに加えて、現地の研究者との交流を通じて新たな知見を得てきたいと考えております。それと同時に今年度も科研費のテーマに基づき、東インド会社の在外商館の会計の仕組みについても、さらなる検討を進めていく予定です。


(2018.5)