【経営学部】地域企業連携実習(2023年度)前編

企業と大学を結びつけ、人材育成と地域活性化を目指す「志プロジェクト」

地域の企業と学生が相互に交流する中で、人材育成と地域活性化を目指す「志プロジェクト」。本学は2018年から参加し、会社案内の作成、Wikipedia記事の編集・作成などに取り組んできました。2022年度からは、稲岡大志准教授(経営学部)が担当する「地域企業連携実習」の授業として実施されています。今年度のテーマは、求人施策・コンテンツの作成です。2~4年の受講生8名は、事前準備、参加企業へのヒアリング、発表資料の作成を行い、最終成果報告会に向けて取り組みを進めました。

企業と学生の交流から生まれる学びに期待

今回の「志プロジェクト」は昨年度と同様、株式会社アピックス、千房ホールディングス株式会社、株式会社日本電気化学工業所、日本鏡板工業株式会社の4社にご協力いただきました。4社のうちでどの企業を担当するかは、学生同士で話し合って決定しました。
 
全15回の授業のうち、前半は企業取材に向けた事前学習を行います。まずは、前例のないユニークな採用方法を取り入れている企業について調べ、発表。パワーポイントのスライドづくりなどプレゼンテーションのスキルを向上させると同時に、人材採用に関する知見を広めることを狙いとした授業です。次に、担当企業について調べ、学生同士で意見を出し合って質問内容を検討するなど準備をしっかりと行い、企業取材に臨んでいきます。授業後半は、企業取材で得られた情報をもとに、どのような成果発表を行うのかを検討し、最終成果報告会に向けてプレゼンテーションの準備を進めていきます。
 
2023年9月末に行われた2回目の授業では、企業の担当者の方々と学生が初顔合わせ。稲岡准教授は、「就職活動の際に企業と学生の接点となる求人コンテンツや求人施策について、企業と学生が協力して考えていきます。この取り組みにより、学生は一つの企業の経営や人材に関する考え方を深く知る中で、企業を見る目を養えるでしょう。また、企業側にとっても、学生目線での企業選びの視点を知り、自社の存在理由や企業文化、人材ニーズなどを捉え直す機会になると考えています」と、プロジェクトへの期待を語りました。この日は、企業担当者から企業概要の説明があったほか、事前準備や心構えなどインタビュー取材に関するレクチャーを行いました。

各企業について深掘りするインタビュー取材を実施

企業取材に際しての企業との事前打合せや日程調整も学生自身が行いました。ビジネスメールを書くのが初めてという学生も多く、基本的なマナーを授業で学んだといいます。WEBサイトなどで企業の情報を確認した上で、企業取材に臨みました。

株式会社アピックス

デジタル印刷、総合文書情報管理サービスを中心としたBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業を展開しています。事前に取締役社長にオンライン取材を行った上で、企業訪問時には多様な立場の社員にお話を聞きました。海外出身の社員、勤続年数が長い社員、人材採用担当者と、それぞれの立場から入社した理由や仕事内容、必要とされる人材など、多くの質問に答えていただきました。インタビュー後には社内を見学し、職場の雰囲気や仕事内容について理解を深めることができました。
 
話を聞いた学生は、「就職先として中小企業にはネガティブな印象を持つ人もいるが、福利厚生の充実度や良好な人間関係、仕事のやりがいなど、社員の方々から企業の良さが分かるお話をたくさん聞けた。これらの企業の魅力を就活生に伝わるように表現することを意識し、成果物を作成していきたい」と話しました。

千房ホールディングス株式会社

お好み焼き「千房」を中心とした店舗を全国・海外展開し、冷凍食品販売なども手掛ける総合外食企業。取材時には、人材採用について幅広く話を聞かせていただきました。企業側から「学生は就職先として外食産業にどのようなイメージを抱いているか」といった質問もあり、企業と就活生という異なる立場から意見交換でき、双方にとって有意義な時間となりました。配属エリアや勤務時間を限定した社員の採用、元受刑者の就業支援をするプロジェクトなど、同社の特色ある採用活動についても詳しく説明がありました。
 
「就職先選択で重視するポイントに関し、企業と学生の考えにはギャップがあると感じた」「多様な雇用形態や職場環境の整備など、企業は人材確保のためにいろいろ考えていることを知った」と取材後の学生は話し、しっかりと対話したからこそ分かったことが多くあったようです。今回の取材を踏まえ、「学生にアピールできる採用活動を提案したい」と、取り組みへの意欲を語りました。

株式会社日本電気化学工業所

アルミニウムの腐食を防止する表面処理加工を専門に行う企業です。その技術は、住宅や高層ビルの建材、車両などに活かされています。本社を訪問し、代表取締役社長や総務・生産本部の社員の方々が取材に対応。経営理念、製造業現場の実状、社風、求める人材像、人材採用の課題など、学生たちのさまざまな質問に率直な答えが返ってきます。「企業と就活生の距離を埋めるため、イメージキャラクターを作ってみてはどうか」という学生からの提案には、「アイデアをぜひ考えてほしい」と、社長から学生の取り組みを後押しする言葉がかけられました。後日、工場を訪問し、生産現場も見学しました。
 
取材を終えた学生は、「社員は家族という考え方は若い世代には受け入れられないと思っていたが、社員を大切にする温かさなのだと感じられた」「社長の言葉で説明してもらい、経営理念がよく理解できた」「物事をプラスにとらえて仕事に取り組んでいるという言葉が印象に残った」と、多様な気づきが得られたと話していました。

日本鏡板工業株式会社

化学・食品プラント施設などに用いられる、圧力容器用の「鏡板」を製造・販売する企業です。同社では「鏡ミライ」と名付けた公式キャラクターを活用し、広報活動を行っています。人材採用活動でもキャラクターを活躍させるという案を事前に考えた学生は、取材時にその案を提示したところ、社長からも好感触を得られました。急遽、取材の場に広報担当者も加わり、キャラクター活用のさまざまなアイデア出しが行われ、さながら企画会議のように活発な意見交換がされました。
 
実際に訪問して話をすることで、「上司と部下の関係でも話しやすい雰囲気が感じられた」「福利厚生の制度がしっかりと整えられている」など、企業の魅力が伝わってきたと学生は言います。「他企業と差別化できるよう、キャラクターを使った求人コンテンツを完成させたい」と今後の取り組みの目標を述べました。
 
企業取材後、2月の最終成果報告会に向け、学生たちは取り組みを進めていきます。取材で得た情報は授業内で報告し、受講生全員で意見を出し合って成果物の内容について検討を重ねました。必要に応じて追加のヒアリングや企業訪問も行い、各企業の協力のもと、求人コンテンツの作成という課題に向き合いました。