私の専門は、労働問題および労働組合に関する研究です。経済学においてデータ分析は不可欠ですが、私は公開データの分析にとどまらず、労働者の立場に身を置いたり、当事者の声を直接聞いたりして得られる一次情報を重視しています。そのため、参与観察という社会調査法を用いた研究に取り組み、研究指導においても、学生の興味関心や個性・背景に応じた実践を支援しています。
私が学生だった1990年代以降、「自己責任」という言葉が広く使われ、就職難や低賃金といった問題が個人の責任であるかのように語られる場面が増えてきました。しかし経済学の観点から見れば、労働者の状況は経済情勢や社会制度の影響を大きく受けるものであり、単純に個人の責任に帰すことはできません。そのため、労働問題と表裏一体にある社会保障についても研究・指導の対象としています。社会の構造を捉え、自ら問いを立てて考え続ける力は、研究者や高度専門職に欠かせません。学生の皆さんには、探究心を大切にしながら、現実の社会に主体的に向き合う姿勢を身につけてほしいと考えています。