【2023年度】江島由裕ゼミ 産学連携の実践的なPBL「かちぞうzemi」に初参加

企業とのコラボで、社会課題を解決、新たな価値創造に挑む

学生がチーム単位でパートナー組織の課題にアプローチし、新たな価値を創造する産学連携の実践的なPBL(課題解決型プログラム)活動である「かちぞう zemi」。本学からは経営学部の江島由裕ゼミが参加しました。
2023年5月のキックオフミーティングでパートナー企業とのマッチング・ドラフト会議を実施。9月の中間報告会を経て、11月26日に開催された最終成果報告会で、半年間にわたる取り組みと成果を発表しました。

3大学全8チームが多彩な業界からエントリーした8企業と協働

報告会当日は、江島ゼミから参加した3チームのほか、京都産業大学経営学部(2チーム)や近畿大学経営学部(3チーム)が最終成果報告会に挑みました。パートナー企業にはコンサルティング会社や物品レンタル会社、パッケージ制作会社などさまざまな業界から8企業がエントリーしました。
 
2番手で登場した江島ゼミBチーム。パートナー企業であるIKIGAI WORKS株式会社は、さまざまな組織の健康増進、エンゲージメント向上を支援する企業。今回は、「学生による学生のためのIKIGAI企業のモノサシ作成」「マイプロジェクト(※1)作成」「IKIGAI企業のPR」というお題が出されました。それに対してBチームは、「学生はネームバリューや周囲の評価を気にして就職活動しているのではないか」という課題提起をもとに、①自分にとって良い職場とはなんなのか ②どうすればマイモノサシ(※2)を発見できるのか、という2つの問いを掲げることからスタート。
 
※1 マイプロジェクト…過去の経験を振り返ることにより、自分の中に眠っている本当の気持ちを認識し、プロジェクトという形に移すことによって生み出されていく世の中との繋がりであり、またその手法、場所、哲学のこと
※2 マイモノサシ…働きがいを感じられる企業の魅力を測るために個々人が定める基準
 
まずは自分自身の過去の経験を振り返り、マイプロジェクトを作成。発表を担当した学生は、陸上競技を13年間続けた結果「自分の好きなことは長く続けられる」というマイプロジェクトを作成し、それを基に「自分がしたいことが実現できる企業」というマイモノサシを定めました。その後、他者の視点を得るために経営者の方々へのインタビューを実施。インタビューした方々のマイプロジェクトを学生がまとめます。そこである経営者の「関わるすべての人をハッピーにする事業」という価値観に心動かされた学生は、「自分がしたいことが実現できる企業」から「世界中の人を幸せにできる事業を展開する企業」へとマイモノサシを変更。この完成した「マイモノサシ」を使って、就職を希望する企業を探していきます。さらにこの一連のプロセスを他の学生にも追体験してもらうため、複数の質問項目に回答していく形式のオンライン診断システム「かちノシス」を作成。「かちノシス」利用者はその診断結果から、自分の価値観に合った企業のPRページ(経営者インタビューを基に学生が作成)を見ることができるという提案を行いました。
 
4番手の江島ゼミCチームは、コクヨマーケティング株式会社からの「文房具やオフィス家具の企業向け通販サイト・べんりねっとの市場シェアを拡大する」というお題に取り組みました。これに対してCチームは社会課題解決という観点から「障がい者の方がより働きやすいオフィス空間を創造する」というゴールを設定。
実際の企業訪問から「自分の(障がいに)合う家具がない」などの課題をピックアップ。次に、ショールームに足を運ぶなどの移動が困難な障がい者に配慮し、メタバース空間上で、障がい者向け家具やオフィス空間を公開します。メタバース空間で家具やオフィス空間を疑似体験した人たちの意見を集約し、それらを反映した家具や、オーダーメイド可能な商品を作成。それらの商品をべんりねっとで販売するという解決策を提案しました。さらに「メタバース空間ではなく実際に試したい」という人向けにはコクヨマーケティングのショールームを活用する、「自分の意見が反映された商品が実際に販売されているのか分からない」という問題には、べんりねっと利用者にIDを付与して個別に情報を提供する、などのこまやかなフォロー案も提案しました。
 
8番手で登場した江島ゼミAチームは、パッケージ制作会社・株式会社明成孝橋美術から出された「社会課題を解決し、ありがとうを伝えるパッケージデザインを作る」というテーマで活動。自分たちにとって身近な「フードロス」という社会課題を解決するために、家庭などで余った食料品をフードバンクや慈善団体に寄付する活動である「フードドライブ」を行い、食材を運ぶ段ボールを制作するという提案をしました。フードドライブを実際に行っている団体に訪問したことで、Aチームは、①人手不足 ②認知度向上 ③物流費の捻出に着目。フードドライブの拠点として小学校を活用し、子どもたちに食材を持ってきてもらうことで①、②を解決し、給食センターなどの学校出入り業者の協力を仰ぐことで③を打開しようと考えました。肝心の段ボールは統一デザインにQRコードを記載し、寄付した人・された人がお互いに「ありがとう」を伝えられる投稿フォームを作成することを提案しました。

全チームの発表を終え、いよいよ審査発表。江島ゼミBチーム×IKIGAI WORKS株式会社は「かちぞう敢闘賞」を受賞。そして、江島ゼミAチーム×株式会社明成孝橋美術が見事「かちぞうグランプリ」を受賞しました。審査員の講評ではBチームはプレゼンのうまさ、分かりやすさが高く評価され、Aチームはビジネスモデルまでつなげた実現可能性の高さを絶賛されました。
 
また、プロジェクトの黒子役に徹した江島教授は「結果としてはグランプリと敢闘賞の受賞でしたが、3チームともかなりのことをやり遂げました。受賞の対象とならなかったCチームは、江島ゼミのカリキュラムポリシー基準から考えるとダントツ1位だったと思います。約6カ月もの間、パートナー企業(社長、部長、社員など)と毎週90分の打ち合せを行い、それ以外にも学生同士の会議や、私との打ち合わせを重ねてきた忍耐力は素晴らしいものです。加えて、複数の企業インタビュー調査に向けたアポ取り、調査項目の設定・実施も、すべて学生自身で行い、無事終えたことは立派でした。今後は今回の経験を次に活かす、自分に活かすことが大事となっていきます。学生が自分に自信をもって、今後のキャリア、人生につなげてほしいと思います」とゼミ生たちの頑張りを評価しました。
 
企業との協働の成果を他大学とのコンペティションという形で競い合い高め合った今回の「かちぞうzemi」。これから本格的な就職活動に突入する学生たちにとって、多くの学びと気づきを得られたプロジェクトとなりました。

学生の声

有田 瑞起さん(経営学部3年)
かちぞうzemiの活動はつらい時期もありましたが、同じゼミの他チームの頑張りに励まされてやり遂げることができました。コラボさせていただいた明成孝橋美術の孝橋さんは、僕たちの意見を否定せず、自由にさせてくださったのですが、自由だからこその産みの苦しみを実感しました。グランプリという賞をいただきましたが、他大学の学生や審査員の方々の質問やコメントから、まだまだ改良の余地があるという気づきも得たので、より発展させていければと思います。
 
俵 美愛さん(経営学部3年)
「マイモノサシ」を作成することに取り組みましたが、その過程で、江島先生との対話を通してさらに考えを深める“語り直し”を行い、価値観に対する理解を深めていくことができました。他大学や他チームが社会課題の解決を図る提案をする中で、私たちBチームは自分たちのモヤモヤ解決を目指して、具体的な解決策までつなげられたことはよかったと思っています。
 
藤原 悠希さん(経営学部3年)
私たちのチームは「障がい者の方がより働きやすいオフィス空間を創造する」というゴールを設定しました。しかし調査をしていくうちに、社屋を建てた時点ですでにバリアフリー化されている企業が多くあるなど、自分たちの考えた提案内容が思ったより必要とされていなかったり、障がい者向けオーダーメイド家具の市場は社会的優先度が低く、実現可能性が見込めないことが見えてきました。かちぞうzemiでは苦しんだり悩んだりすることが多かったのですが、課題解決に向けた提案にあたっては、自分たちの課題感と企業や社会が捉えている課題感をすり合わせることの重要性を学びました。