【2023年度】樫山武浩ゼミ 航空測量の先端技術を学ぶ、産学連携ワークショップ開催

航空測量の技術について学び、海の課題を解決するグループワークを実施

9月22日・29日の2日間にわたり、アジア航測株式会社が主催するワークショップが実施されました。樫山ゼミの3年生14名、2年生2名が参加。航空測量の技術や事業について学び、海に関する社会課題をIT技術で解決するグループワークに取り組みました。経済学部の樫山武浩准教授は、「ゼミでは、データサイエンスの手法を用いて社会課題の解決に取り組んでいます。ただ現状、ゼミや授業で取り扱う統計データは限定されています。今回のワークショップでは空間データという種類の異なるデータに触れることで、新たな気づきや学びを得てほしいと考えました」と、ワークショップへの期待を語ります。

河川管理などに活用されるアジア航測の技術力

アジア航測は、航空機とセンサによる空間情報の収集・解析から活用方法の提案、実施プラン策定までの一連の技術サービスを提供する企業です。今回のワークショップは、同社の持つ技術の一つである「航空レーザ測深」についてのレクチャーからスタートしました。航空レーザ測深とは、航空機からレーザ光を照射し、反射時間から水中の深さや海底地形を計測する技術です。得られたデータは、河川管理などに活用されます。
 
同社の技術が社会でどのような役割を担っているのか、学生たちは集中して説明に聞き入っていました。経済学部3年の和田翔瑠さんは、「航空レーザ測深の技術を使い、沈没した船の写真を撮影して立体的に観察できるという話が印象的でした。新しい技術を知り、おもしろそうで気持ちが高まりました」と感想を述べます。経済学部3年の三谷逸星さんも、「専門性の高い技術力を持ち、その力がいろいろな企業から必要とされ、社会課題の解決に貢献していると知り、魅力的な企業だと感じました」と、同社の技術や事業に興味を持ったと話します。

学生ならではの自由な発想で、海の課題の解決策を提案

次に、海に関する社会課題をIT技術で解決するワークショップを実施しました。まずは、海に関する社会課題を洗い出し、課題解決にどのような技術が必要か、学生それぞれが考えます。海洋汚染、海面上昇、プラスチックごみ問題、海水浴場の安全維持、海難事故、漁業における産業課題や環境問題と、幅広い課題があることがわかりました。次のステップでは個人での考えをグループで共有し、課題解決のためのアイデアを創出します。ファシリテーターとしてアジア航測の若手社員が各グループに1名つき、学生たちをサポート。これまで海の課題について考えたことがない学生たちはアイデア出しに苦戦していましたが、ファシリテーターからの働きかけに助けられ、最終的にはたくさんのアイデアを出すことができました。アイデアの中から解決策を絞り、決定したところで1日目は終了。学生ならではの自由な発想が新鮮に感じられたようで、アジア航測の社員の方々は興味深く議論を見守ってくださいました。

2日目は、前回決定した解決策を深掘りした上でプレゼンの準備を行い、グループごとに発表しました。和田さんのグループが発表したのは、「Uber Fish」と名付けたデリバリーサービスです。WEBアプリを利用して一般釣り人と魚が欲しい人を繋ぎ、魚を配達するというサービスにより、漁師不足を補うというもの。アジア航測からは、「海の課題解決の一助となり、ビジネスとしても実現性がある」と評価されました。
三谷さんのグループは、海水浴場の水難事故の防止を課題とし、海水浴場の情報を発信するWEBサービスを提案。注意喚起に加え、アクセス方法や設備、周辺観光情報など訪れる人にとって有益な情報を同時に発信することで、危険情報へのアクセスを増加させるというアイデアです。また、他のグループも、それぞれオリジナリティのある解決策を発表しました。

新しい技術に触れ、得られた学びや気づき

取り組みを終え、和田さんは「今まで知らなかった技術に触れ、さらに詳しく知りたいと思ったし、世界にはいろいろな技術があるのだと視野が広がりました。自分の将来を決めるためにも、もっと他の技術や企業についても知らなければならないと意識を改めました」と話します。三谷さんは、データサイエンスを用いた具体的な技術や事業について知れたことが一番の収穫だったと言います。「データサイエンスを学んだ先にはこのような仕事があるのだとわかり、将来の道筋が見えてきました。また、技術力の高い企業で働きたいという思いも芽生え、就活に向けての大切な気づきが得られたと思います」
 
樫山先生は取り組みを振り返り、「異分野のデータでも、どのような技術か理解し、活用するアイデアを出している学生たちの姿を見て頼もしく感じました。今後、また別の分野や企業との取り組みも検討していこうと思っています」と、参加学生の積極的な取り組む姿勢を評価しました。
また、「今回はアイデアの創出にとどまりましたが、データを分析して何らかの結果を導き出すという取り組みも試みることができればと考えています。異分野のデータの取り扱いは難しいものの、だからこそ感じられるおもしろさや新鮮さがあると思います。そこから生まれる新しい技術への興味や視野の広がりは、進路選択にも役立つでしょう」と、今後の展望を語りました。
 
新しい世界を知る機会を提供され、学生たちはさまざまな知見や気づきを得ました。企業にとっても、学生になじみのない業界・技術について情報発信でき、学生の発想が刺激となったと言います。学生と企業の双方に、収穫をもたらしたワークショップとなりました。