【2023年度】山本公平ゼミ 地元企業との産学連携プロジェクトでサンドイッチを販売

地元企業との連携を通じて、販売を実践的に学ぶ

情報社会学部の山本公平教授のゼミでは、株式会社ソレイユが運営するたまごサンド専門店「燦々堂」との産学連携のプロジェクトを実施。昨年から学内販売に向けた取り組みをスタートし、ゼミ生がチームに分かれて役割分担し、価格決定や仕入れ、データ分析、販売用ディスプレイの作成に携わりました。全4回の学内販売を経験した学生たちの活動を振り返ります。

手作りPOPをもった山本ゼミ。写真・後列左から2番目が山本教授

販売士資格の学びを活かして、企業の課題解決に挑戦

山本ゼミでは、ゼミ生全員が販売士3級の資格取得することを目標としています。資格取得によって、接客や売り場づくりなど、流通・小売業に必要不可欠な基礎知識を習得します。さらに、得た知識を活かして実践的に学べる場として、“食”に関わる外部機関と連携したプロジェクトを実施しており、これまでにも大阪府豊能町牧地区で農業法人の活性化などに携わりました。
 
現4年生のゼミ生たちもまた、3年生の時から大阪市東淀川区に拠点を置く株式会社ソレイユと産学連携プロジェクトに取り組んでいます。同社は、女性が働ける場づくりをコンセプトに事業展開をしており、2022年、本学大隅キャンパスの近くに、たまごサンド専門店「燦々堂」をオープンしました。
 
「このプロジェクトの目的は、本学内で商品のテスト販売を行うことにより、『燦々堂』のサンドイッチの美味しさを知ってもらい、知名度アップを図るというもの。そして学生たちは、活動を通じて商品販売の仕組みを体系的に学びます」と、山本教授は説明します。

学内販売に向け、学生からのアイデアを企業に提案

学生たちは、価格設定や仕入れ数の決定から携わり、店舗ディスプレイ、接客販売、データ分析、予約販売と、チームに分かれて役割を分担。学内販売の価格設定においては、「燦々堂」では2個セットで販売されているサンドイッチを1個売りにすること、通常価格から値下げした上に2個購入ではさらにお得になる価格での販売を提案しました。購入しやすい価格を設定し、お得さをアピールして購買意欲を高めることを狙いとした提案内容は、企業から承諾を得られました。また、校舎前で実施する店頭販売の対象は学生中心になると予測し、教職員への知名度アップを図るため、学内の事務部署を訪問して注文を受け付ける予約販売の実施も決定しました。
 
たまごフィリングがたっぷり入った商品の特長をふまえ、“あふれる”たまごサンドというキャッチフレーズを考えたのは、近本景介さん。企業担当者との意見交換の中で、具があふれて食べにくいというお客様の声もあると聞いたことが発案のヒントとなったそう。「マイナスの声を逆手にとって、商品のPRポイントとしてキャッチフレーズにしました。企業の方に採用していただいてうれしかったです」と話します。学内販売では、このキャッチフレーズが大きくデザインされたのぼり旗が作成され、多くの学生の目を引きました。
 
2022年11月から2023年1月の間に、3回の学内販売を実施。クリームチーズの入った「デビルサンド」など4種類のたまごサンドとドリンクを販売しました。1回目は用意した商品が完売したものの、完売までに1時間以上を要しました。販売の様子を見守っていた企業の担当者からは、「お客様へのアプローチの仕方に工夫が必要」などのアドバイスをもらいました。学生たちは、ディスプレイや声かけの仕方などに改善が必要だと感じたと言います。
 
教職員向けの予約販売を担当したチームは、オリジナルのチラシを作成し、学内の各部署を訪問して販売促進に努めました。1回目の販売時から十数個の予約注文を獲得。東野愛弥さんは、「チラシにはQRコードを記載し、簡単に注文できるようにしました。予約注文によって安定した販売数を確保でき、『燦々堂』の認知度を高めるという目的も、ある程度は達成できたと思います」と振り返ります。蒲原敬太さんは、「各部署を訪問する中で、教職員の方々と交流できたのが印象的。リピーターを獲得することの難しさも感じました」と述べました。

さまざまな工夫を凝らした4回目の学内販売

5月には、これまでの3回の販売活動を振り返って改善点について検討を行った上で、最終の学内販売を実施しました。これまでの販売実績のデータを分析し、人気商品の仕入れ数も増やして臨みます。
 
POPや店頭チラシの作成といった店舗ディスプレイを主に担当したのは、松下依世さん。1回目の販売では事前準備が不足してシンプルなディスプレイでしたが、人をひきつける工夫が必要だと気づいたと言います。最終回では、販売士資格の学習で得た知識を活かし、言葉選びやデザインにこだわったPOPや店頭チラシを作成しました。「離れた場所からでも目立つ色遣いや、“本日限り”など特別感が伝わるフレーズを採用し、ディスプレイに工夫を凝らしました。より多くの人に注目してもらえることで、商品の売れ行きにつながったと思います」

接客を担当した成田千紘さんは、声のかけ方によって相手の反応が大きく変わることを実感したと言います。「サンドイッチと一緒に販売しているジュースの売れ行きが良くなかったのですが、お得に購入できるという一言を添えると、最終回では初めて完売しました」とのこと。また、行列を避けて購入をあきらめてしまう人への対応として、列に並んでいる人におすすめ商品を先に伝えておくことで回転率を上げるというアイデアも実行しました。
 
同じく接客担当の蔵光大希さんも、コミュニケーションの大切さに改めて気づいたと話します。「最近では無人販売なども増えていますが、店頭で直接お客さんと言葉をかわしてこそ生まれる関係性があると感じました。良いコミュニケーションは、リピーターを増やすことにつながるのではないかと思います」

結果、最終回では、最も仕入れ数を増やしたものの、最短の時間で完売させることができました。学生たちは、商品を販売する際の接客や売り場づくりには知識やスキルが必要であることを実感し、企業や店舗が行っている販売戦略についても理解を深められたようです。
 
山本教授は学生たちの活動の様子を振り返り、「当初は当事者意識があまり感じられませんでしたが、回を重ねるごとに自分たちでチャレンジしていこうという意識が高まっていきました」と話します。「座学で学ぶだけでなく、実際に経験することは学生にとって大きな学びとなります。また、『燦々堂』の実店舗でもサンドイッチの1個売りがスタートし、キャッチフレーズをデザインしたのぼり旗は継続して使用されており、学生の発想が企業活動に影響を与えました。知名度アップにも貢献でき、企業側にもメリットのあるプロジェクトとなりました」
 
販売活動を終えた学生たちは、プロジェクトを通じての学びを卒業論文としてまとめるなど、さらなる研究活動につなげていきます。経験したことを表現する中で学びを深め、今後の研究・社会活動に活かしていくことを期待します。