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夏学プログラム「シナリオ・プランニング」実施報告

2021年10月07日(木)

未来予測PBL「将来の大経大のシナリオを考えよう!」

 9月初旬、夏休みプログラムの一つ「シナリオ・プランニング(PBL)」が行われました。5日間の取り組みの中で、社会課題の具体化を通じて、考え得る限りの大経大の未来のストーリーを学生・職員・外部講師がチームとなって考え、学長に提案しました。
 シナリオ・プランニングとは、5年~10年先の将来において起こりえる未来の可能性を複数描き、その結果を企業や個人におけるさまざまな検討の材料として利用する手段のこと。今回は「10年後の日本における大学教育の未来」をテーマに、大学内の情報や大学外の環境を分析するなどして、いくつかの指標に基づき、どんな将来が訪れたとしても揺るがない大学にするためのプランニングを行いました。
 

第2~4回目のワークショップでは、将来的に日本で起こりうる事象についてPEST分析という手法を用いて、政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、科学技術(Technology)の視点で分析を行うために、毎回ワークやディスカッションを行いました。「移民が増加する、減少する」「アジア経済は発展する、しない」など、様々な意見が出ましたが、確実に起こるであろう事象をベースシナリオとして決めました。そして起きるかどうかは不確実だが大学に対する影響が大きい2つの事象「南海トラフ地震が起きるか否か」、「リカレント教育が進むか否か」を2つの軸として設定し、4つのシナリオを描きました。第5回目の最終発表では、4つのシナリオに対して、1人ずつ、1つの「未来のシナリオ」と「この未来シナリオに対して大阪経済大学はどんな戦略を立てておく必要があるのか」を山本学長にプレゼンしました。
 
 プレゼンを聞いた山本学長は「どのシナリオからも、大切なのは産官学連携で企業や地域の『人とつながること』だということがわかった。いろんな世代の人が集まり、取り組むことで、それぞれの次の活動への動機付けになる。こういった機会を増やせるよう大学として取り組んでいきたい」と総評しました。
参加した学生は、「いろんな方の考えや意見を聞くのは改めて大事だと確認できました。また就職活動で自分の数年後の未来を考えるときにシナリオ・プランニングで学んだことを活用していけたらと思います」と語りました。
学生も教職員も今回のPBLでのディスカッションを通じて、世代を超えて、新たな発見と考え方を実感する大きな学びの機会となりました。
 

4つのシナリオと対策

◆ベースシナリオ
・日本国内では出生数が低下。デジタルネイティブ世代が入学。
・AIやロボットが仕事に変化を与え、大学が社会から求められている人物像が変化している。
・ロボットやAIを操作するための資格など知識や技術が求められ、単純作業はロボットに代替えしている。
 人間にはクリエイティブな発想知識・スキルが重視され、介護・接客など人間として誠意・熱意・愛が求められる。
・バーチャル空間を活用した、完全オンライン大学も複数ある。各大学にはオンラインのプログラムが設置されている。
 学生の移動の障壁がなくなり、海外の大学も選択肢に入る。
・大学の設備のIoT化が進むことで、より質の高いデータ収集が可能になる。ビックデータを質の高い教育に活用している。など

◆すべてが進化し、新しく生まれ変わる「ニュースタンダードシティ」
―南海トラフが起こり、リカレント教育が進んでいる未来―
 
・大地震が起こったことで企業、大学、地方公共団体が以前にも増して力を合わせ、復興に力を入れるだろうことから、企業と学生とがコラボしたワークショップや地方ボランティアに力をいれる。また共同研究を行っているのが当たり前の世界であり、実務経験が豊富な社会人とも議論できる教員を増やす必要がある。
・リカレント教育が進むことで、就活生の年齢も多様化しているため、どの年齢でも社会に適応できるような人材育成、キャリア教育の強化が必要。
 
 
◆現在のまま、何も変化が起きない「ノーアップデートシティ」
―南海トラフは起きず、リカレント教育も進まない未来―
 
・日本でリカレント教育が一般化せず社会人は独学で学ぶだけであり、リカレント教育を行う海外の企業と差が生まれ、日本の経済競争力が弱まる。そのため、産官学の連携を強化させ、学生時代から企業との接点を増やしていく。
・AIやロボットの技術が発達したことにより、仕事を失い収入が減少する人が増加、副業をする人や収入の高い就職先を目指す人が増加するため大学進学率は上昇。また就職の競争倍率があがるため、就職支援を今よりも強化する必要がある。
・中学、高校時にアクティブラーニングの授業が取り入れられ、対人コミュニケーション能力の高い人が増えるため、時代に合わせキャリア教育を変化させていく。
・IoTの多様性が当たり前になるため、デジタルに強い大学になるよう対応していく。
 
◆人々の学び(ソフト)のみが進化する「インナーアップデートシティ」
―南海トラフは起きないが、リカレント教育は進む場合―
 
・バーチャル空間でのオンライン教育が本格化、またAlやロボットによる単純な繰り返し作業の代替が進んだことなどを要因として、リカレント教育が進展し大学で学ぶ人口が大きく増加。リアルタイムでの翻訳もほぼ完璧となっており、日本語のみで海外大学のプログラムも受講可能となる。そのため、社会人向けのオンラインプログラムや社会人版インターンシップの実施、社会人教育のための教員のスキル養成の仕組み構築が必要。
・社会人の学びが進んだことで、チャレンジすることが当たり前の社会となり、起業や兼業が大きく増加。日本の経済・日本的経営に特化したプログラムやSDGsに取り組みながらの経営や長期的な経営をするためのプログラム、海外学生には日本の経済はどうやって発展してきたのか、特にアジアの人が学べるプログラムを構築し、これを強みにする。
 
◆建物等のハードのみ進化する「アウトサイドアップデートシティ」
―南海トラフが起こるが、リカレント教育は進まない―
 
・南海トラフが日本全国に被害をもたらした場合、リカレント教育の実績有無によって地域の復興スピードの違いが明確になる。各大学は援助物資が集まるコミュニティ機能を担っていて、一部のリカレント教育を実施していた大学では、履修生がリーダーシップやマネジメントを発揮し、居住地域の復興を先導する役目を担っている。そのため、リカレント教育に力を入れ、コミュニティの中でリーダーシップを発揮できる人材育成プログラムが必要。
・また様々な年代の人が集まるコミュニティで協力しあうには、デジタル世代とアナログ世代をつなぐ人材を育成する必要があるため、社会人と学生のミックスプログラムや夫婦・親子など家族で参加できる講義を用意し、年代差で同じ学びを通じて、コミュニティで活躍できる人材を育成する。