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経済学部 籠谷公司准教授の論文が国際的トップジャーナル International Studies Quarterly に掲載されました

2022年09月07日(水)

EBPMの実現を目指す経済学部・籠谷准教授の研究    ー新たな教育プログラムへの活用も期待

 経済学部・籠谷公司准教授と呉文欽(ウー・ウェンチン、台湾中央研究)氏の共同研究の成果がInternational Studies Quarterly に掲載されました。論文では、台湾への米国製軍事兵器の販売に対する中国からの外交的抗議が台湾の世論に与える影響が分析されています。
 
 対外的な脅威が国民の間で愛国心を喚起し、リーダーや政策に対する支持を増加させることは、国際関係論においてラリー現象と呼ばれています。著者たちは軍事行動や経済制裁とは異なり、標的国の国民に物理的な損害を与えない外交的抗議がラリー現象を引き起こすのかどうかランダム化試験(randomized  controlled trial)という統計的因果推論を行う方法を用いて検証しました。
 
 具体的には、アンケートを行い回答者たちを、「外交的抗議の含まれた架空の記事を読むグループ」と「外交的抗議の含まれない架空の記事を読むグループ」へとランダムに割り当て、これらのグループの政治的態度の差を政策効果として偏りなく測定しようとしました。実験結果は、台湾と政治的争点を抱える宿敵国からの外交的抗議がラリー現象を引き起こすことを明らかにしました。したがって、宿敵国からの外交的抗議は標的国内で政治的反発を生み出し、標的国からの強硬な政策として跳ね返るブーメラン現象を生み出すことになります。

 また、これらの知見を踏まえて籠谷准教授は、ナンシー・ペロシ米国下院議長の訪台に対する中国からの外交的抗議が台湾の世論に与える影響に関する論説を『The Diplomat』 誌と『日経ビジネス』誌に寄稿されています。これは、EBPM(evidence-based policy making、証拠に基づく政策立案)の実現を目指して研究成果を一般向けにアウトリーチする試みでもあります。
 
 本学経済学部は、グローバル人材プログラムとデータサイエンスプログラムを新設し、多様な価値観からなる国際社会の在り方を理解し、ビッグデータ時代に対応したデータ分析を行える人材の輩出を目指します。籠谷准教授の活動は、2つのプログラムの在り方を示しています。興味を持った学生たちが積極的にプログラムを利用し、スキルアップを図るようになることが教員の願いです。

発表論文
Koji Kagotani, Wen-Chin Wu
"When Do Diplomatic Protests Boomerang? Foreign Protests against US Arms Sales and Domestic Public Support in Taiwan",International Studies Quarterly, Volume 66, Issue 3, September 2022, sqac043, https://doi.org/10.1093/isq/sqac043
 
オンライン国際ニュース雑誌『The Diplomat』掲載記事 
"China’s Anger Over Pelosi Visit Will Further Alienate Taiwanese"
 
『日経ビジネス』誌 掲載記事
社会調査実験の「ラリー現象」で読む ペロシ氏訪台と中台関係