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【実施報告】創立90周年記念講演会 第1回「動き出す関西」

2022年10月29日(土)

著名人たちが語る、これからの社会のあり方

大阪経済大学は、2022年9月30日創立90周年を迎えました。これを記念し、90周年記念講演会を5回にわたって開催します。全体テーマは、「公共共創社会へ~VUCAの時代~」。Society 5.0やSDGsの実現、成長と分配の好循環、地球環境の課題をテーマに社会課題の解決に取り組む専門家・企業家を招聘して議論を進めていきます。今回は第1回目として、株式会社ロイヤルホテル 代表取締役社長 䕃山秀一氏をお迎えし、「動き出す関西」をテーマに語っていただきました。

【プロフィール】
䕃山秀一氏
1956年大阪府生まれ。神戸大学を卒業後、住友銀行(現・三井住友銀行)で関西の法人営業畑を歩み、取締役兼副頭取、取締役副会長などを歴任。さらに関西経済同友会代表幹事を務め、大阪へのIR誘致にも尽力。2017年からはロイヤルホテル代表取締役社長に就任。
 
インバウンドにおける大阪、関西の高いポテンシャル
 
第1回講演会は、本学創立記念日に開催され、会場には、一般の方に加え、本学学生や䕃山氏の招聘に協力いただいた本学出身の企業経営者が組織する大阪経済大学大樟春秋会の方々など、多くの聴講者にご来場いただきました。
 
まず、䕃山氏は2011年以降、政府の経済戦略の一端として実施されたインバウンドの結果を紹介。2019年まで訪日外国人旅行は、人数、消費額ともに右肩上がりに増加。とくに来阪外国人は、2014年から2019年の間に来日人数は約3.27倍(全国は約2.37倍)、消費額は約5.89倍(全国は約2.49倍)と、爆発的な伸びを達成しています。䕃山氏はこの現状を、「大阪は、魅力的な観光資源に加え、中国をはじめアジア圏からの距離的な近さ、空港の発着枠の拡大といった規制緩和の効果がもっとも色濃く反映した結果」だと分析します。
 
ところが2020年に発生した新型コロナウイルス感染症により、訪日外国人は激減。なかでも東京オリンピック・パラリンピックの開催1年延長、翌年の無観客開催は、首都圏の観光、経済に大打撃を与えました。
大阪をはじめ、関西もコロナ禍における経済的影響は多大でしたが、「コロナの渦中にあたった東京オリンピック・パラリンピックとは異なり、関西で予定されている大阪・関西万博をはじめとする数々の大型開発・プロジェクトは、コロナが落ち着くであろう、これからに控えているのが幸い」と䕃山氏。その後、今後の関西の大型開発・プロジェクトを元バンカーらしく数値も示しながら説明されていきました。
 
【関西の大型開発・プロジェクト概要】
 
「大阪・関西万博」 時期:2025年 場所:夢洲
テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。入場者約2,820万人、経済効果約1兆9,000億円を想定。
137カ国・地域、8国際機関が公式参加表明(2022年9月9日時点)。
 
「大阪IR(統合型リゾート)」時期:2029年秋~冬 場所:夢洲
カジノ施設、ホテル、MICE※施設、レストラン、エンターテインメント施設等が集結。
来訪者を大阪から日本各地の観光地等へ送り出すなど効果の波及が期待されている。
※MICE:企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議 (Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字を使った造語。
 
「うめきた2期開発」時期:2024年(2期まちびらき)場所:大阪北区
先行開発区域(グランフロント大阪)の西部に位置し、〈「みどり」と「イノベーション」の融合拠点〉を理念に、都市公園とイノベーション拠点、MICE施設の開発が進行中。2026年整備完了を予定。
 
「未来医療型国際拠点」時期:2024年 場所:大阪中之島
病院や高度検診センター、(公財)京都大学iPS細胞研究財団、産学医連携スモールオフィス・インキュベートスペースといった医療機関と企業、スタートアップ、支援機関等が集積する全国初の拠点。
 
 
このほかにも、鉄道や新幹線、高速道路といった多数インフラ整備が挙げられ、会場の参加者も改めて驚き、メモをとったり、PCにデータを打ち込んだりする姿が見られました。
「関西経済の今後は非常に明るいです。これだけのプロジェクトには、多種多様なチャンスがあり、そこに乗っていかない手はないと思います」というメッセージで、䕃山氏は第1部の講演を終えました。

3年後ではなく、今すぐ動き出すことも必要

第2部は、䕃山氏、大阪経済大学大樟春秋会会長森田俊作氏(大和リース株式会社代表取締役会長)、山本学長による座談会を実施。聴講者からの質問も多く寄せられ、その中には、2029年に舞洲で開業を予定している大阪IRについて「運営に税金が使われるのでは」「ギャンブル依存症が懸念される」といった質問もありました。これら質問に、䕃山氏は「大阪IRは民間会社が運営し、収益はIRの各施設に還元されます。国税は一切投与されないことをもっと周知することが必要。また、カジノ施設には入場などについて厳格なルールが設けられます」と回答。夢洲はゴミ焼却物や建設残土などで埋め立てられた人工島であり、活用計画が頓挫したいわば「負の遺産」。そんな地を大阪IRの用地とすることで、大阪市への年間約25億円もの賃貸収入をはじめ、インバウンドなど新たな経済効果を創出する場所へと生まれ変わる価値も強調されました。
 
森田氏からは「大阪・関西万博では、より革新的な技術が多数紹介されるとのことですが、一方で、今、社会が求める、すぐにでも貢献できる技術は2025年を待たずとも積極的に導入していくべきではないでしょうか」と提言され、会場からは賛同の拍手が沸き上がりました。
 
最後に山本学長は、「毎年巣立っていく大阪経済大学の学生たちが、これから大きく動き、変化する関西で修得した知見を元に活躍し、関西、そして日本を牽引してくれることを願っています」と、学生たちにエールを贈り、座談会を締めくくりました。関西と経済界、そして学生たちがつながる、明るく新しい未来に胸躍る講演となりました。