お知らせ・ニュース

ニュース

【実施報告】大阪経済大学図書館 リニューアルオープニングイベント

2023年11月11日(土)

ジャパネットたかた創業者・髙田明氏が「人生を変えた本」を紹介。本学の学生と語り合う

2023年9月30日、図書館のオープニングイベントとして、株式会社ジャパネットたかた創業者であり本学特別招聘教授の髙田明氏が「人生の贈り物〜1冊の本との出会いから〜」というテーマで講演しました。イベント後半では、本学の学生3名が「人生を変えた1冊」を紹介し、髙田氏と直接対話する時間が設けられました。
 
会場の「ラーニング・コモンズ」は、新たに「創発の泉」と名付けられた図書館1階西側のスペースです。東側の閲覧室も「探究の森」として生まれ変わっています。このリニューアルに対して、山本俊一郎学長は開会の挨拶で、「蓄えた知識を生かして新しい価値を生み出す『創発の泉』を体現するような空間になってほしい」と述べ、草薙信照図書館長も、「これから『泉』と『森』を育てていくのは学生諸君」と期待を寄せました。

読書は自分を強くしてくれるもの

髙田氏は本学の卒業生。学生時代は英語研究のクラブ「ESS」に所属し、英語浸りの4年間を送ったそうです。講演の冒頭、髙田氏は「とにかく本を読んでください」と学生らに呼びかけます。読書から得られるものは年齢によって変化し、20代は自分の興味を広げることに、多くの苦楽を経験した40代以降では、自分の心が弱った時、強さを取り戻すのに役立つといいます。
数々の偉業を成し遂げてきた髙田氏ですが、自分の進む道が正しいのか疑問に思うことも何度もありました。その度に本を読み、自分のやり方が間違っていないと勇気づけられたり、先人の知恵から軌道修正を行なったりして、自分に足りないものを補ってきたそうです。
 
髙田氏にとって、「人生はボトルネックを探す旅」だといいます。ボトルネックとは、瓶の首の部分のように、「業務全体で最も生産性や効率を妨げている箇所」を表すビジネス用語です。
その人生観の礎となったのが「ザ・ゴール 企業の究極の目的とは何か」(エリヤフ・ゴールドラット著)です。本書では「3ヶ月内に赤字の工場を立て直せなければ閉鎖」を言い渡された主人公が、工場の社員らとボトルネックを解消し、大きな利益を生み出す工場へと刷新させる様が物語調で語られています。成功の鍵は主人公らが全体最適に目を向けたことで、「上手くいかないとき常にそこに原因(ボトルネック)があり、それは1つじゃありません。全体的なものにまで広がるので、部分的な解決では意味がありません」と髙田氏は指摘します。
「人生も同じです。『人生は常にボトルネックを探す旅』だと頭に置いて、苦しいことがあってもそこでめげないでください。それを受け入れて、次のボトルネックを探して前に進み続けていけば、必ず最高の人生を送ることができます」
 
2冊目に紹介したのは「世阿弥の世界」(増田正造著)で、能研究家の増田正造氏が新しい切り口で能の世界を解き明かした入門書です。
髙田氏は世阿弥が能楽論を記した「風姿花伝」からいくつかの言葉を引用します。
 
  命には終りあり、能には果てあるべからず(死ぬまで稽古を怠らず、芸の向上に努めなさい)
  時分の花(若さによる一時的な美しさ)と真の花(修練を積んで得た才能)
 
「一度成功を味わうと傲慢になりがちですが、謙虚に生きることが大事です。まだまだ自分は足りていないと、謙虚にやり続ける人がやっぱり一流になるんです」と自身の価値観と通じる部分を語りました。
 
3冊目に挙げたのは「経営の教科書 社長が押さえておくべき30の基礎科目」(新将命著)です。著者の新将命氏は、髙田氏が「経営のメンター」と尊敬を寄せる人物。世阿弥の言葉を体現したように85歳に亡くなるまで学ぶことを怠らず、多くの経営に関する名著を残しました。本書では具体例にまで落とし込んだ経営論が綴られており、腹落ちする1冊だと力説しました。
 
最後に紹介したのは、「小さい“つ”が消えた日」(ステファノ・フォン・ロー著)。
100ページほどの児童書ですが、「小さな『つ』が消えたら言葉が成り立たないように、役に立たない人間などいない」と感動した1冊だそうです。
 
講演の締めくくりに、学生らに以下のような言葉を贈りました。
「自分が好きなものを1つでいいから徹底してやっていけば、同じ価値の人が必ず集まってきます。自分1人だけでは何もできません。ジャパネットたかたも、僕がやったのはたった5%で、残りは他の人のおかげです。人と比較しなくていいから、今という瞬間を一生懸命頑張ってください。それで人生変わるよ」
 
髙田氏の言葉、熱のこもった語り方、向ける眼差し全てが、学生を未来へと導く強いエネルギーに満ちていました。

髙田氏と学生の対話によって生まれた新たな学び
 
イベント後半には「人生を変えた1冊」を学生が紹介し、髙田氏と対話する時間が設けられました。複数の学生から手が挙がり、その中から3名が発表しました。
 
1人目の情報社会学部4年の鎌田晴帆さんが紹介したのは、「本をつくる 赤々舎の12年」(産業編集センター編)です。
赤々舎は京都を拠点とし、若手写真家の個性的な写真集を数多く手掛る出版社。
本書では、赤々舎代表取締役の姫野希美氏の本づくりに対する姿勢がインタビュー形式で綴られており、鎌田さんは彼女に共感や憧れを抱いたそうです。
髙田氏は、生き方に感動する人が現れたらその人を研究することを勧めます。
「風姿花伝」を何十回も読み込んで世阿弥の世界観の5割を理解したという経験から、「多読ではなく1冊全てを自分の中に落とし込むことで、その人の人生を深く掘り下げることができる」と語りました。
 
2人目の経営学部1年の青柳胡太郎さんは、「チーズはどこへ消えた?」(スペンサー・ジョンソン著)を紹介しました。
毎日与えられていたチーズがある日突然なくなったときに、小人2人とネズミ2匹がどう対応したかを通してビジネスが語られる本書。青柳さんはこの本から「時代の変化を恐れず、俊敏に反応して行動することと、常に小さな変化に注意を払い、訪れる大きな変化に備えること」を学んだそうです。
髙田氏は「時代の変化に対応することはビジネスで最も大切」と同意しながらも、変化に気づくことは難しく、長く業界に居続けると変化を敬遠するようになると指摘します。
「お客さんの立場から自分を俯瞰的に見ることができなければ、ビジネスは上手くいきません。変化に対応できる自分になるには、やるべきことが何か見極めて、徹底的に踏み込んで努力することです。時代の流れは全てを変化させますから、ずっと同じことをやっていたらお客さんは振り向かなくなります」と確かな経験に基づくアドバイスを返しました。
 
3人目の経済学部2年の田中健斗さんが紹介したのは、「まかせる力」(新将命・髙田明著)です。
2015年にジャパネットたかたの社長の座を長男に譲った髙田氏が、新氏と共に「まかせる」ことの大切さを綴ったこの1冊。約70名で構成されている学生オリター団体・DOGs代表の田中さんは、後輩を育てることに迷いを感じこの本を手に取りました。
髙田氏は、目標に向かって進む背中を後輩に示せないと人はついてこないと前置きしてから、「任せる人に対して自分から愛情を示すこと」を提案しました。
「グループ内での声がけは大事です。コミュニケーションにおいて、非言語は言葉の3倍の力があるので、ニコッと笑って話しかけるだけで違います。相手を気にかけていると伝われば、任せられる人もこの人のために頑張ろうという気持ちになってくれるものですよ」
髙田氏の言葉に、田中さんは「頑張ります」と力強く返答し、対話の時間は終了しました。

閉会の挨拶で、草薙図書館長は「『ボッコちゃん』(星新一著)を読んだ時に感じたような、何十年経っても変わらない自分を導く1本筋を髙田さんにも感じました。今日、髙田さんと直接やりとりができた学生は人生を変えるような経験ができたと思います」と述べ、イベントを締め括りました。
今回紹介された髙田氏・学長・図書館長の「人生を変えた1冊」は、髙田氏の著作本と共にSCTLカウンター前の特別展示コーナーに展示中です。この機会に、生まれ変わった図書館に足を運んでみてください。
 
「人生を変えた1冊」を発表した学生へのインタビュー
 
情報社会学部4年 鎌田 晴帆さん
「髙田さんも姫野さんも古典芸能に関心が高く、情緒的なものに感動する気持ちは色んなことに通じると感じたので、『世阿弥の世界』を読んでみたいです」
 
経営学部1年 青柳 胡太郎さん
「変化対応について取り上げたことを髙田さんに褒められたのが、すごく嬉しかったです。本に苦手意識があったのですが、読書によって語彙力や伝える力など身につけられるとわかったので、これから継続していきたいです」
 
経済学部2年 田中 健斗さん
「『まかせる力』に、『ジョークを交えて話すと相手に伝わりやすい』と書かれていたのですが、今日の講演で髙田さんが実践されていて、ジョークがあることですっと話が入ってきて、時間が経つのが早く感じました。高度な技術だと思いますが、私も真似したいと思いました」