社会連携

福田先生講演録(抜粋)

福田先生講演

今後の中小企業診断士に求められる資質

 まず、コンサルタントと中小企業診断士の違いはご存知でしょうか。経営コンサルタントというのは誰でも名乗ることができますし、コンサルタントを名乗って社会通念上好ましくないことをされる人がいるのも事実です。しかし、中小企業診断士は経営コンサルタントとして唯一の国家資格であります。「民間コンサルタント」として自立できる競争力を持ち、経営コンサルタントの民間市場を、質・量ともに充実させることが期待されています。
中小企業診断士資格取得後は自助努力により、独自の得意分野を獲得することが必要です。得意分野の有無により声がかかる数が全く違います。


次に、中小企業診断士の業務と役割ですが、主に以下の4つの業務があります。

「経営の診断および経営に関する助言」
「企業の成長戦略策定やその実行のためのアドバイスの実施」
「中小企業と行政、中小企業と金融機関をつなぐパイプ役」
「中小企業施策の適切な活用支援」


 この中でも「企業の成長戦略策定やその実行のためのアドバイスの実施」が私は一番大事だと思います。中小企業診断士と他の多くの士業との違いはこの点にあると思います。例えば、公認会計士や税理士と中小企業診断士ではどこが違うのか。公認会計士と税理士の主要業務は過去会計に基づいた手続き業務です。決算資料を基にして税務申告など様々な手続きを行う。そして、これは彼らの独占業務であり、中小企業診断士が行うことはできません。では、中小企業診断士は企業に対して何を行うのか。過去会計ももちろん必要ですが、主たる業務は未来会計に基づいた成長政略策定業務です。未来会計に基づいた成長戦略を経営者とともに描き、そして企業の成長をサポートすることが主たる業務です。 

 ではそこで、中小企業診断士の社会的評価について、私の主観ですがお伝えしたいと思います。私は中小企業診断士として1989年に独立しましたが、当時は決算書や税金申告の相談をされるなど、税理士と間違われることも多々ありました。税理士の補完的な役割であるという認識が少なからずありました。それが2012年ごろになると診断士の業務の理解がやや進み、現在は、知名度が飛躍的に向上し、資格としての人気も向上しました。日経新聞が1年に1回行っている各士業の評価では、「ビジネスに一番役立つ資格は何か?」という3年前の調査の1位が中小企業診断士であり、2年前の「ビジネスマンが一番取りたい資格は何か?」という調査でも中小企業診断士が1位でした。士業は全般的に8年前が最も受験者が多かったのですが、現在では当時の4割しか受験者がいないという士業もあります。しかし、中小企業診断士は僅かですが増えています。
 そして、昨年9月21日の記事では、ほとんどの士業において業務の70%以上がAIに代替されるということも書かれていましたが、弁護士と診断士だけは違いました。弁護士は1.4%がAIに代替されるという予測でしたが、診断士はわずか0.2%でした。それだけ人的能力が負う部分が大きいということが言えます。
 知識と人的能力を持ってして、クライアント企業の経営者、従業員と一緒になって、知恵と汗を出し、社会に役立つ企業として発展するようにお役に立つこと。これは我々に与えられた命題なのです。その際に注意すべきことは、小さな仕事の場合であっても手抜きするようであってはなりません。独立したばかりの方の中には、引き受けた仕事の金額が安いからそれなりに適当に仕事をすればいいだろうと思っている方もおられるようですが、これは大間違いです。そんなことを言っていたらまずその人は成長しないでしょう。皆さんも、私もそうでしたが、診断士になるまではお金を払ってまで勉強しますよね、今度は仮に金額が少ないとしてもお金を頂いて勉強でき、実践力を付けられるわけです。その時手を抜くなんてものすごくもったいない。
 また、人的能力という点では、EQ(Emotional Quotient)を高めることを意識して頂きたい。IQ(Intelligence Quotient)は皆さま1次試験を通られた方ですので、お持ちであると思いますが、私はEQがコンサルタントとしての成功を導くと考えております。EQというのは、自分を正しく知り、コントロールし、自分を動機づける能力、つまり自分が持つスキルやノウハウをうまく発揮するために必要な能力ということです。このEQを培う方法の一つとしてリベラルアーツが挙げられます。専門分野における専門知識だけではコンサルタントとして魅力がありません。多様化し、複雑化し、急速に変化する時代に対応できる経営サポートのためには、特定の専門知識だけでなくリベラルアーツ、つまり幅広い知識の習得により異なる考え方やアプローチ方法を身に着ける必要があります。多様で幅広い知識に触れることで、自ら課題を見つけ出し、広い視野で物事を判断できるようになるからです。


 最後にコンサルティング活動における望ましい行動パターンについてお話します。
まずは、顧客目線で取り組むということです。われわれ診断士というのはあくまで伴走者であり、主役として走るのは経営者です。経営者が走りやすいように、より記録が出やすいように伴走するだけです。それから顧客の意見は素直に聞き、そのうえで自分の考えを述べることも重要です。決めつけることはあってはなりません。
また、あくまでも伴走者なので、成果物作成の分担も意識する必要があります。自分が全てを引き受けてはいけません。例えば、補助金を申請するといった場合、はっきり言って我々が書いた方が時間はかかりません。しかし、経営者を伸ばすために経営者に書いてもらうことが大切です。
 次に、問題点の指摘よりも、改善提案に重点を置く。これはいつも私が強調している部分です。弱点はすぐに分かりますが、そこばかり指摘すると経営者はやる気をなくします。弱点を知ってもらうことは必要ですが、強調するだけではいけません。短所を探すよりも長所を探すほうが重要です。長所を探し出し、長所を伸ばすように助言を行う。これが本当のコンサルタントだと思います。短所や弱点を治すのは時間と労力がかかるうえ、結局改善されないというケースも多々あります。それに比べ長所をさらに伸ばす方が経験上容易です。しかも長所を伸ばすと短所が隠れてしまう、ということも私の長い診断士経験からも幾度もありました。


 本日お伝えした診断士として必要となる資質については、本課程の授業でも身に着けて頂けるよう、カリキュラムを設計しています。診断士試験の突破を目指す場合、どうしても知識定着に比重が置かれてしまいますが、本課程では知識に加えて、EQ、診断士としての実践的スキル、そして企業診断現場の実際など、試験対策では得られない貴重な学びの機会を提供いたします。1年間しっかり学んで頂き、一歩先を行く成長戦略の提案ができる中小企業診断士に成長し、大阪ひいては関西経済の活性化を担う人材を一人でも多く輩出できればうれしく思います。