No.502

No.502 2014年9月18日(木)

春学期卒業式でメッセージ「夢を追い続けて!」

 春学期の卒業式が行われ、合わせて92名の学部卒業生・大学院修了生を見送りました。大学院前期博士課程の代表は、年配の社会人の方でした。後期博士課程は1名でしたが、中国からの女子留学生でした。皆さん、おめでとうございました。卒業生代表から感謝の答辞をいただきましたが、これから頑張っていただきたいと思います。最後に、グリークラブとともに全員起立して学歌を斉唱していると、会場の心が一つに融けあうのを感じます。
「1.大淀の 水は春ゆく ゆたかな春だ 芽立つ葦原 緑が沁(し)みる この若さ 希望は明るい 蒼穹(おおぞら)かけて 永遠(とわ)の青春 みなぎる学園  大阪 大阪経済大学//2.大樟(くす)の 蔭は裕々(ひろびろ) 夏風そよぐ 学徒師弟が 幹負(お)いもちて 諸汗(もろあせ)に 確(しっ)かと植えた 融和の象徴(シンボル) 繁れ自由の 花さく学園  大阪 大阪経済大学」
 以下は、当日お話しした私の式辞です。

 本日は、卒業、修了、おめでとうございます。ご臨席いただきました保護者の皆さまはじめご関係に方々にもお慶び申し上げます。
 1949(昭和24)年に新制の大学となった大阪経済大学の前身は、1932(昭和7)年に創立された浪華高等商業学校であり、その後1935(昭和10)年に昭和高等商業学校として再建されました。その初代校長となった黒正巌博士以来、「自由と融和」を建学の精神として受け継いできました。今年で創立82周年となり、2032年には創立100周年を迎えます。卒業生は9万名を越えました。本日から、皆さんもその仲間です。

 私は毎年春学期に新入生特殊講義で、大経大の歴史と初代学長黒正巌について講義をしています(野風草だよりNo.456466479480)。今年も卒業生などにきてもらい、いろいろな夢を語ってもらいました。最初に、アメリカのメンフィス大学に1年間留学していた4年の女子学生に話してもらいました。留学を決意するまでの「あと一歩」の勇気が必要だということを具体的に語ってもらい、スライドで留学生活を紹介してもらいました。アメリカに居てとくに痛感したのは、世界中から集まる留学生たちはそれぞれ自国にプライドを持っていて、自分が日本の社会や歴史、文化について何にも知らないということだったそうです。グローバル化が進む中、皆さんにも勇気をもって海外へ出かけていってほしいと思います。
 次には、私のゼミ卒業生で46歳になる会社員Kさんに来ていただきました。卒業してからずっと一つの会社に勤め続けながら感じたことなどを、率直に語ってもらいました。「会社が倒産寸前になった時もあきらめずに立ち向かっって行ったのには、感動した」、「転勤はチャンスであるとの考えには、驚いた」、「働くということの意味が初めてよくわかった」などの学生の感想が寄せられていました。3.11の東北大震災の時には仙台に勤めていて被災しましたが、その時に地域の人たちのつながりの強さ、温かさが身に染みたという生々しい話に、学生たちは感動していました。

劇団四季の大阪公演ライオンキングに出演中ですが、忙しい合間をぬって酒井康樹さん26歳に来ていただきました。彼も私のゼミ生でしたが、大学を中退しました。酒井君になぜ大学を中退したかと聞くと、休学の中途半端な状態では、どこかに甘えが出てきてしまった。退路を完全に断ってこれしかないという状態にしないと、周りの人たちがすべてミュージカルの夢に賭けているのに立ち向かえないからとのことでした。厳しい世界です。今はバックのアンサンブルですが、フロントのメインとはどこが違うのかと質問すると、難しいですが「人間力」、何を歌と踊りで観客に伝えたいのか、ふだんからの生き方が大切という答えが返ってきました。厳しくて不安定かもしれないけど、音楽や芸術の夢もいいじゃないですか。
 中学校の常勤教員をしている卒業したばかりのHさんに来ていただき、教育に携わる喜び、学生時代にサッカー部のキャプテンをしながら、クラブと学業を両立させてきた学生生活などを熱く語っていただきました。教えている中学生が目の前で変わっていく、成長していく姿を見られる教育という仕事の素晴らしさに感動する日々。だから何としてでも採用試験に合格するつもりであるという話に、受講生の中には教員を目ざしている学生も数多くいて、うなずいていました。講師をしながらの試験勉強は楽ではないが、教師になるのが夢なので叶うまで努力し続ける。また、大学時代に応援してくださった教職員の方や仲間と約束したことなので、あきらめる訳にはいきませんと決意を語ってくれました。

 最後に、サプライズゲストとしてジャパネットたかたの高田明社長においでいただきました。現在、本学の卒業生ではおそらく一番の有名人でしょう。最初、学生さんたちは半信半疑でしたが、スクリーンにジャパネットたかたの通販画面を映すと、「あっ、やっぱり高田さんや」、「ほんまもんや」、「本当に来てくれたんだ」と、たちまち高田さんのまわりは人だかりとなり、スマフォで一緒に撮る学生でパニック状態になりました。学生時代のESSの英語クラブのこと、友達とマージャン、パチンコで遊んだこと、就職してヨーロッパに数年駐在したこと、故郷の長崎県平戸に帰り実家のカメラ屋さんを手伝ったこと、そしてラジオショッピング、テレビショッピングと事業を拡大してきたこと、そして個人情報の流出で苦労したことなどを60分間たっぷり語っていただきました。
 初めの20分くらいは落ち着いた感じで話されていましたが、段々興がのり話の核心に近づくと、テレビでのあの少々ハイトーンの声に変わっていきます。テレビでも是非とも買ってほしいと言う気持ちが昂じてきて、自然とあのハイトーンになってしまうのだそうです。この日も学生さんたちに熱く「夢」を語りかけていただきました。「夢は自己更新されていく。10代、20代、30代・・・と変わっていっていいんだ。一所懸命に努力していれば、あとで次の夢につながり、必ず報われる」、「夢を持って行動し続けることが大事で、夢は変化するのが当たり前」、「格差は、そう思った瞬間、負けだよ、特別な優越感も劣等感も持たずに自然体で」、「出来ていないことは素直に認める勇気が大切だ」、「人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられるんじゃないかな」という話に、学生たちの眼は輝いていました。そして楽しい話に笑いが絶えませんでした。高田さんのメッセージは後輩たちに確実に伝わったと思います。
 「夢」。皆さんの夢は何でしょうか。本学では、「ゼミの大経大」、「マナーの大経大」、「就職の大経大」を教育の特徴として、皆さんの夢作りをサポートしてきました。これからも周りの人たちに感謝しながら、夢の実現、更新に向けて、努力してください。

 最後にちょっと難しい言葉を一つだけお伝えして、終わりにします。本学の前身である戦前の昭和高等商業学校の校長先生で、戦後1949年に本学の初代学長を務めた黒正巌博士の言葉に「道理貫天地」というのがあります。これは世界で、日本でオンリーワンの大経大オリジナルの言葉です。道理とは何か、人の生きる道、理。いかに生きるか、いかに死ぬるか。実は先ほどから述べている夢は、この道理と関係しているのではないでしょうか。夢を求めて更新していっても、古今東西変わらないもの。道理は、世界をそして目に見えない天地をも貫いているんだ、と黒正博士は言われたのです。繰り返しますが、各人各様の解釈でかまいません。正解はありません。それが大学で学ぶということです。死ぬまでわからないかもしれません。それもおもしろいんじゃないかな。「道理は天地を貫く」、大経大でしか学べないこの言葉、覚えていてほしいのです。
 あらためて卒業生、修了生の皆さん、おめでとう。以上で、皆さんへのお祝いのメッセージといたします。ありがとうございました。