第4回中小研セミナー

第4回中小研セミナー(2016.7.30)開催報告

   中小企業経営・研究所の開設50周年記念事業の一環として、2013年度から中小研セミナーをスタートさせました。中小研では国内外の中小企業研究者を中心に、収集資料の提供、「中小企業季報」ならびに「経営経済」等の発刊、各種シンポジウムの開催などを行ってきましたが、さらにアカデミックな視点だけでなく、実務的視点や政策的視点からの情報提供を強化しています。その活動を通じて、研究所の存在を中小企業の経営者や支援者などにも広く知ってもらいたいと考えています。そこで、本年度は中小研セミナーを2回実施しました。以下、4回目のセミナーの概要について紹介します。

   タイトル: 大阪の町工場がアジアNO.1戦略を語る
               ~苦悩のリーダー育成とアジア展開の軌跡~
   日 時: 2016730()
             14001600
   場 所: C31教室
   講 師: 野田 隆昌氏(株式会社ノダ代表取締役社長)
   参加者: 175名(申込者280名) 

   株式会社ノダは工業用木型を製造販売する大阪で創業された企業で、国内4拠点の他、ベトナム、タイ、フィリピンの海外3拠点に現地法人をもっています(従業員数は国内約80名、海外約150名程度)。
   講師として登壇した野田社長は、1999年に父親から事業を受け継ぎ、その後、矢継ぎ早に海外進出を行い、今では業界で一定の地位を確立されています。
市場環境は「業界自体は約500社の小さいニッチな産業」(野田氏)であり国内市場は縮小傾向にあるなど決して有望市場とはみなされておらず、新たな取組みが求められている業界です。そこで、国内だけに目を向けていると成長が期待できないことから、リスクはあるがチャンスの多い海外の市場を開拓することを決断されました。夢ある職場づくりと企業成長を目的に「グローバルニッチトップ」という戦略の実現に邁進されています。
 講演の中で、海外展開では人材の育成に苦労はしたが、たくさんのメリットを享受していると野田氏は指摘されています。止むことのないグローバル化への経営者としての覚悟やマネジメントの仕組みが理解できたこと、新興国市場での競争でコスト競争力が向上したこと、海外での取引が国内での大企業との取引につながったことなどです。
 また、日本企業は技術志向が強く、顧客の要求以上の製品を生産するので価格競争に負けてしまうことが多々あるとの指摘もされています。中小企業の国際化は中小企業政策の大きなテーマであり、多くの企業が真剣に検討すべき経営課題でもあります。
 今回の講演は、成熟化した国内市場での販路開拓が難しい中小企業においても、新たな視点で海外市場に目を向けることの大切さを教えてくれる説得力に富んだ内容でした。
最後に、「これからも海外進出世界一を目指して、次はアメリカ、メキシコなどマーケットのあるところには進出していく」、「僕らのような平凡な会社でも勝とうと思ったら勝てる」との力強い野田社長の言葉が、中小企業の活路と明るい未来を示しているようでした。

以上
中小企業・経営研究所