第6回中小研セミナー

第6回中小研セミナー(2017.6.3開催)【報告】

中小企業・経営研究所の開設50周年記念事業の一環として、2013年度から中小研セミナーをスタートさせました。中小研では国内外の中小企業研究者を中心に、収集資料の提供、「中小企業季報」ならびに「経営経済」等の発刊、各種シンポジウムの開催などを行ってきましたが、さらにアカデミックな視点だけでなく、実務的視点や政策的視点からの情報提供を強化しています。その活動を通じて、研究所の存在を中小企業の経営者や支援者などにも広く知ってもらいたいと考えています。そこで、本年度は中小研セミナーを2回実施しました。以下、6回目のセミナーの概要について紹介します。

 

タイトル:熊沢蕃山の天災地変対策をヒントに防災事業へ
日 時: 201763(土)
             14001600
場 所: C31教室
講 師: 藤原 充弘(フジワラ産業株式会社 代表取締役社長)
参加者: 140名(申込者183名)
 

今回のセミナーは、わが国の大きな政策課題である「地方創生」時代における企業の役割について焦点を当てています。企業はどのような役割を果たしているのか、また果たそうとしているのかについて、企業のトップに語っていただきました。

6回目は、フジワラ産業株式会社の創立者で代表取締役の藤原充弘氏をお招きし、防災事業の礎を築いた「熊沢蕃山の天災地変対策をヒントに防災事業へ」というテーマで講演してもらいました。氏は1969年に本学を卒業された卒業生です。

フジワラ産業株式会社は、「わが国の技術で、水環境はもっと改善できるはず」の考えから、1980年に水環境事業に参入され、19951月には多くの地震や津波に苦しむ人々のニュースに「少しの設備と対策があれば、もっと助かる命があるはず」と防災事業に参入されます。さらに、2003年には地球温暖化の深刻な状況に「一刻も早く、地球再生の道を探るべき」と考え、京都大学などと共同で地球環境の研究を始めておられます。これらのビジネスに一貫して流れているコンセプトは、「命を守る」をテーマに様々な事業に取り組んでおられることです。 「水の命」そして「人の命」、「地球の命」というように。そして、1982年に開発された「フジフロート自動スカム除去システム」が典型ですが、外国製機器の設計思想をそのまま持ち込むのではなく日本式に改良・改善して日本の現場に適した機器を開発・生産されているところです。数多くの製品を開発され、1992年に「発明実施功労者賞」(大阪府知事)、1995年に「大阪優秀発明賞」(社団法人発明協会)、 1997年に「ベンチャービジネス優秀賞」 2005年に「(予備ゲート)研究奨励賞受賞」(防災・環境新技術研究会)など多くの賞を受賞されています。また、「2017年はばたく中小企業・小規模事業者300社」(中小企業庁)にも選定されています。まさに「ナニワのエジソン」とも評される理由があるわけです。なぜ、このように宇宙規模での大きな視野で革新的な製品を構想できるのか?この理由について、その原点が、黒正巌博士が熊沢蕃山研究序説の中で述べられた「天災地変」が大きなヒントになっているとのことです。藤原氏によると、熊沢蕃山は備前岡山八塔寺村で「知行合一」を旗印に屯田開墾し治山治水を実践して陽明学を大きく開眼させた方で、この思想はやがて明治維新の原動力となったとのことです。その地で生まれた一人として、熊沢蕃山に倣い「行」を先とした「行知合一」を掲げて、氏の使命として地球規模の大災害の解決に挑戦し続けたいとのことです。現在、南海トラフ地震対策用の津波避難タワーや火山水蒸気噴火対策などの防災事業などで社会貢献を続けられています。

 今回の講演は、経営者としての大きな志と使命感を持ち、新しい革新的な製品づくりにチャレンジしていくことの大切さとともに、その熱意と行動が地域の多くの人に共感を呼びお越し、地方創生につながっていくことを教えてくれる説得力に富んだ内容でした。

中小企業・経営研究所
以上