黒坂 真

「独裁体制」の経済事象に新しい解釈を与えたい

独裁体制を存続させるための手法とは

私の研究テーマは「独裁体制」の経済理論。旧ソ連や毛沢東時代の中国、そして特に北朝鮮の独裁体制がなぜ存続してきたのかを分析しています。独裁体制下の経済には、一般の市場経済とは大きく異なる“奇妙な動き”があります。たとえば北朝鮮の人々は、マスゲームのような、独裁者の気に入る行動をして、報償を獲得しようとします。その背景となっているのが「資源配分上の利害関係」に基づく人々の合理的な行動です。資源配分上の利害関係とは、簡単にいえば「お金と物資のやり取り」です。そしてお金が手に入れば、人々は多くの消費ができ、満足を得ることができます。独裁者は共通して、そうした手法を使って体制を維持しようとするのです。


私が独裁体制に興味を持ったきっかけは、在日朝鮮人・李佑泓さんが北朝鮮の農業の実情を描いた「どん底の共和国〜北朝鮮不作の構造」(亜紀書房)を読んだことです。日本や欧米との違いを実感し、北朝鮮など発展途上国の経済を研究する重要性を強く認識しました。

研究を軸に人権活動にも貢献

独裁体制の国が公表する経済データは操作されている可能性が高いため、私は韓国や日本で暮らす脱北者たちから直接話を聞くことを重視しています。そして独裁体制における経済事象に新しい解釈を与え、独裁者や独裁体制下の人々の行動に対する理解を進めたい。それは自分たちが生きている社会や経済を見つめ直すうえでも役立つのではないかと思っています。
また、研究を軸とした学外活動として、私はアジア人権人道学会の理事を務め、拉致日本人の救出活動にも関わっています。独裁体制の国の実態を伝え、今後の展開に対する提案を行うことで、人権活動の推進に貢献したいと考えています。


授業では「マクロ経済学」を担当しています。マクロ経済学とは、わかりやすくいえば、景気が良くなったり悪くなったりする原因を考える学問。学生たちには現実の社会の動きを見ながら、常に自分の生き方と結びつける形で経済を考えてほしいと思っています。