独裁体制を存続させるための手法とは
私の研究テーマは「独裁体制」の経済理論。旧ソ連や毛沢東時代の中国、そして特に北朝鮮の独裁体制がなぜ存続してきたのかを分析しています。独裁体制下の経済には、一般の市場経済とは大きく異なる“奇妙な動き”があります。たとえば北朝鮮の人々は、マスゲームのような、独裁者の気に入る行動をして、報償を獲得しようとします。その背景となっているのが「資源配分上の利害関係」に基づく人々の合理的な行動です。資源配分上の利害関係とは、簡単にいえば「お金と物資のやり取り」です。そしてお金が手に入れば、人々は多くの消費ができ、満足を得ることができます。独裁者は共通して、そうした手法を使って体制を維持しようとするのです。
私が独裁体制に興味を持ったきっかけは、在日朝鮮人・李佑泓さんが北朝鮮の農業の実情を描いた「どん底の共和国〜北朝鮮不作の構造」(亜紀書房)を読んだことです。日本や欧米との違いを実感し、北朝鮮など発展途上国の経済を研究する重要性を強く認識しました。