不妊手術などによる地域猫の増減を調査
 私は現在、動物福祉(アニマル・ウェルフェア)に関する研究をしています。動物福祉という概念は特に第二次世界大戦後、ヨーロッパを中心に発展してきました。動物を食用や荷役など人間のために利用することを認めつつ、飢えや疾病、ストレスがなく快適性に配慮した飼育や管理を行うという考えです。
 日本ではまだ動物福祉という言葉は聞き慣れませんが、動物愛護の機運が高まるなか、動物園やペットの世界などへもその活動が広がりつつあります。
 最近の研究のテーマは「野良猫の個体群管理と福祉」についてで、特に地域猫活動について調査してきました。地域猫活動の中心となるTNR (Trap=捕獲して、Neuter=不妊去勢手術を行い、Return=元の場所に戻す)が、野良猫の数や苦情を減らす効果があるのかどうか、東淀川区などを中心とした大阪市のデータを分析しました。また不妊手術を行うことが野良猫の健康状態に与える影響なども併行して調査しました。
 データを分析した結果、自治体が行うTNRの数字だけでは明確な効果は認められませんでした。しかし保健所が引き取った野良猫の数と、その地域の社会経済的要因に関係性がみられました。