本田良巳

経済のグローバル化と国際財務報告基準の行方を探る

大きな変革期を迎えた会計制度

私はドイツとEU(欧州連合)の会計制度を研究しています。日本の会計制度は明治時代以降、法形式を重視するドイツの会計制度を模倣してきました。会計制度は今、国際的に大きな変革期を迎えており、おもしろい研究テーマになっています。
それは世界共通の会計基準「国際財務報告基準 IFRS(International Financial Reporting Standards)」が設定されたためです。EUは2005年、他の地域や国々に先駆けてIFRSを採用しました。しかし、EU加盟国の間でIFRSへの取り組み方が大きく異なるため、これらの先行事例を考察することで、今後の会計制度の在り方を探ることができます。アメリカでも2007年以降、IFRSへの対応を「コンバージェンス(共通化)」から「アドプション(導入)」に移行し、日本もアメリカに呼応する動きを始めています。欧米の会計制度の動きに目を向ければ、日本の会計制度の特質・問題点もおのずと見えてくるのです。

国際財務報告基準を導入するメリットとは

IFRS導入の一番の狙いは、企業の透明性を高め、企業の財務内容について世界の投資家に理解を深めてもらうことです。内外の企業の決算書を同じ土俵で比較することができるため、海外で資金調達を行いたい企業にとっても大きなメリットになります。
日本では2010年3月期から、国際的な事業・財務活動を行なっている上場企業の連結財務諸表にIFRSの任意適用を認めています。2017年から2019年の間に適用されることになり、日本の決算書の内容に大きな変化が見られるでしょう。
IFRSの導入については異論もありますが、今や経済は企業の国際化、多国籍化を抜きに語ることはできません。外国企業と取引する場合、国内企業との取引ではなかった問題も生じます。経済のグローバル化が進み、これまで常識と考えられてきた基準が崩れ、新たな波がやってきています。
私のゼミでは「日本における国際財務報告基準の導入」をテーマに学習していますが、うれしいことに2年前、ゼミ生が公認会計士試験に現役合格しました。私の目標は経済のグローバル化を担う会計人を育てることです。学生たちには広い視野で会計を学ぶことで企業の本質を見る目を養い、国際社会に大きく羽ばたいていってほしいものです。