憲法の視点から「教育を受ける権利」を考える
私の専門分野は憲法で、「低所得世帯教育支援法制の公法学的・実証的研究」に取り組んでいます。低所得世帯教育支援制度には現在、さまざまな実務的・理論的混乱が生じています。それが特に顕著なのが、学校給食の領域です。就学援助制度受給世帯と生活保護受給世帯が重複するケースが増えているため、困窮世帯が学校給食費支援を利用できないという問題が起きているのです。これは、就学援助を受給できる基準の緩和や学校給食無償化により解決可能ですが、そのような事例は未だ少ないのが現状です。
また就学援助制度は、子どもがいる日本の全世帯の約15%が利用しているにも関わらず、私が研究を始めるまでの25年間ほどは、殆ど研究が行われていませんでした。憲法学の観点から、教育支援法制の理念(学校生活保障)や成立の歴史、基本構造(受給関係)を明らかにすることで、近年の子どもの貧困を解決する一助になればと考えています。
この問題に関して参考になるのが、韓国における無償給食(2011年から実施)で、2015年度には小学校の94%、中学校の75%で実施されています。そして無償給食が義務教育無償化への第一歩であり、生存権の実現、子どもの貧困解決、保護者の家事負担軽減などにつながると期待されています。日本においても、韓国の現状と課題を踏まえたうえで、教育支援法制の憲法上の根拠・理念・基本構造を問い直す必要があり、それらを法学的・実証的に研究し論文を書き続けることで、教育格差を是正するための社会的アピールになればと思います。