難波孝志

変わる「つながり」を追い続けて

人と人とのつながりを研究する「社会学」

現代社会は人と人とのつながりが薄れてきているとも言われますが、決してそんなことはありません。地縁や町内会組織というものにしばられたくないと思う人は増えているかもしれませんが、地域社会というものがなくなることはありません。人と人とはつながっていないと、生きていけないからです。その最たる例の一つは、災害への備え。つながっていないと、助けることも助けられることもできません。つながりは薄れているのではなく、つながり方が変わってきているのです。

社会学とは、人と人とのつながりを研究する学問です。人間同士のつながりは大きく三つに分けられます。ひとつは「結合」関係。接近、適応、同化、統合など、仲良くする関係です。その反対が「分離」関係。競争、対立、闘争、派閥といったものです。そしてもうひとつが「上下」関係。支配、代表、分業といったものです。社会学では、どれが良くて、どれが悪いとは考えません。人がいれば、どれもが当然存在するのです。

沖縄の「軍用地」をめぐるつながり

私の研究対象は、行政と住民の間に位置して、公と民の間を取り結ぶ中間組織です。人と人とのつながりをみていく中で、最もぶつかり合い、せめぎあいが露出してくるのが、そういう組織だと考えるからです。現在は、沖縄の「軍用地」における共有地について研究しています。沖縄の軍用地には、国から軍用地料が支払われています。そのような土地を地域のみんなの土地として共同所有するにあたり、地域の人々はどうつながっているのか。行政や、そこに新たに来た人たちとの関係は。興味深いものがみえてきます。

都会のマンションで暮らす人は、つながりを求めていないイメージがあります。実際、中学生以下の子どもを持つ女性や高齢者は地域の人々とのつながりを持っていますが、それ以外の人は地域と関わっていない人が多いでしょう。しかし、マンションの管理組合などは、つながりたくてつながっているわけではないけれど、必要な組織でもあります。大阪市内には次々とタワーマンションが建設されていますが、大規模なタワーマンションのつながりはどうなっているのか、などにも興味があります。