宮武記章

会計の側面から多面的・中立的に電力問題を考える

電力会社の会計制度や財政状態などを調査・分析

 私の専門分野は会計学で、「電力会社の会計問題」について研究しています。東日本大震災以降、日本の電力事情は大きく変わり、それが電力会社の経営に重大な影響を与えています。しかし、公益事業である電力会社の会計制度は、一般企業とは異なる複雑な仕組みになっていて、震災後に様々な変更が加えられたことで、さらに理解が難しくなっています。特例が認められている資産除去債務や、実際には資産価値のない廃炉を決めた原発が資産として計上されるなど、独自の仕組みが複数あるためです。そのため私は、原発や再生可能エネルギーのあり方、そして電力会社の財政状態などを、会計学の側面から調査・分析しています。
 震災後に原発が停止したことで、いくつかが再稼働した現在も電力会社の財政は危機的な状況にあり、再生可能エネルギーが増加してはいますが、電力需要のほんの一部を担っているに過ぎません。電力は社会に必要不可欠なインフラですから、もし大手電力会社が倒産するような状況になれば、国民の税金で補填することになるでしょう。
 しかし震災以降、メディアは国民の経済的負担の増加や電力会社の経営危機には殆ど触れず、関心は再生可能エネルギーの可能性や原発の危険性に集中しています。私は、電力問題を会計的な側面から調査することで、多面的・中立的に電力問題を考え研究を進めています。原発に賛成の人も反対の人も、利権や政治的立場から離れて、本当に日本の国益になるのは何なのか、柔軟に考えてもらうための一助になればと思います。

大切なのは疑問を持ち自分の視点で考えること

 担当科目は「環境問題と企業」「企業分析の基礎」「英文会計」です。「環境問題と企業」では、地球の歴史から考えて温暖化は本当にダメなのか、人口が減るのは悪いことなのかといった根本的な問題提起を行い、常識とされている考えについて、疑問を持ち考えてもらいます。教科書も絶対的なものではなく、大切なのは多様な知識を得、それらを消化することによって自分なりの視点を持つことです。
 「企業分析の基礎」では、将来の就活や社会人となるための基礎知識として、企業を会計数値の側面から分析できる能力を培います。また「英文会計」では、ビジネスの共通言語である英語と会計の能力を高めることを目標に、基本的な会計処理を英語で学びます。大学での専門的な学びの楽しさを、ぜひ知ってもらいたいです。