小松亜紀子

消費に関する個人の行動と 社会潮流との関係を考察

心を満たす、より良い消費行動とは

私は社会心理学的な観点から、消費者行動について研究しています。主な対象としているのは、食品や衣類など短期間で消費するものではなく、車や携帯電話といった耐久消費財。アンケート調査により、消費者の意識や考え、消費の傾向などを調査・分析しています。

アンケート調査で質問する内容は、例えば人がどれくらい流行に対して積極的かを調べるなら、「流行を取り入れていますか」と直接的に聞くのではなく、「流行を取り入れることで自分の個性を発揮できると思いますか」、あるいは「流行を取り入れることは楽しいですか」といった間接的な質問を重ねます。できるだけ建前に影響されない本音を引き出し、その人が実際に流行志向かどうか、つまり社会や集団の影響を受けやすいかどうかを測っていくよう工夫しています。

このような消費者行動の調査・分析は、まず、企業が新しい商品を社会に送り出す際、どのようにすれば多くの消費者に受け入れられるかというマーケティングに役立ちます。さらに、流行に振り回されたりモノを浪費するのでなく、心を満たす、より良い消費行動のあり方を社会に発信していければと考えています。

社会の動きが消費行動により捉えられる

消費というのは、社会のなかで最も変動が表れやすく、社会の動きが消費という形で捉えられる点が非常に興味深いと思います。今、社会のなかで、人とのつながりというものに対する意識が高まっているといわれますが、それにより消費者行動は変化しているのか、あるいは変化していくのかを調査・分析したい。

また若者がモノを買わなくなっている、消費に積極的でないと言われますが、それについても今の若者がモノより人とのつながりを重視している影響かもしれないと注目しています。

担当する「消費者行動論」「社会調査論」「マーケティングリサーチ実習」などの授業では、大学での研究や社会での仕事で何かを考える時、データ(文献、アンケート調査など)を収集・分析して、それに基づいて自分なりの考えを生み出すスキルを培ってほしい。調査や分析の方法を身に付けることは、いろいろな課題に直面した時に、有効な提案を見いだす役に立つと思います。