メディアアートの先駆者の前衛的思考を明らかに
私は「芸術表現とメディアテクノロジー」について研究しています。昨今、芸術とテクノロジーを融合させた新しい表現「メディアアート」が注目されています。表現とテクノロジーは表裏一体の関係にあり、その有機的な結びつきのなかから新たな表現が創り出されていきます。
多様なデジタルメディアを駆使した斬新な作品は、私たちの感覚を刺激し、新しい体験を与えてくれます。しかし高度なテクノロジーに注目するのではなく、「表現とテクノロジー」という普遍的なテーマについて再考し追究することで、デジタルメディア時代の新しい芸術表現の可能性を展望していきたいと思っています。
私は当初、音楽を学びたいと思っていましたが、芸術系大学の授業で実験映像(芸術性の高い短編映像作品)と出会い、興味を持ちました。そして学生の頃から実験映画やビデオアート作品を制作し、国内外で発表してきました。現在は、恩師であるメディアアートの先駆者、山口勝弘先生の思考と表現世界について体系的にまとめたいと考えています。表現とテクノロジーの関係性を問い続けたその前衛的思考は、今後のメディアアートの方向性を考えるうえで非常に重要なヒントを与えてくれるからです。