髙井逸史

住み慣れた地域で健康に暮らせる仕組みを提案

地域資源を活用した見守りや支援を模索

 私の研究テーマは「健康寿命を延ばす地域包括ケアシステムの構築」。誰もが、住み慣れた地域で生きがいを感じながら暮らし続けられる、街や人のあり方を検証しています。
 これからは、医療関係者や企業、学生らがプロボノ(社会人が専門知識・技能を生かして参加する社会貢献)として参加し、健康寿命を延伸させる地域づくりが必要。高齢者自身も、自らの強みを活かした就労やボランティア活動などによって社会や地域とつながり、心地よい「居場所」をつくることが重要です。しかし、地域には単身世帯が増加し、近所同士の交流も希薄になっているため、私たちのような外部の専門家が介入することで、地域資源を活用した見守りや支援を提案し、社会実験を通じて効果を実証していきたいと考えています。

退職後の高齢男性を地域デビューさせたい

 2010年から堺市泉北ニュータウンの地域づくりに取り組んでいます。高齢化率が42%に達した槇塚台(堺市南区)の府営住宅の空き家を改修し、地域レストランや居酒屋などを開店。また、介護予防のための健康体操を、19小学校区のうち13校区で実施しています。泉北ニュータウンまちびらき50周年事業と連携し、ウォークイベントなども開催。上新庄駅近くにある「よどまちステーション(よどきり医療と介護のまちづくり株式会社)」では、フレイル予防講座も開催し、認知症や転倒予防のための健康体操をゼミ生が自ら考え指導しています。
 さらに、情報通信関連企業と連携し、IoTを活用した、高齢者の「身体活動の可視化」にも取り組んでいます。これは歩数・消費カロリー・運動強度が自動測定され、本人や家族のケータイやスマホに活動状況が示されるもの。一人暮らしの高齢者に対する見守りにもつながります。
 これらの取り組みの難しさは、実際に地域に落とし込み、ビジネスとして定着させること。収益性はもちろん、地域で積極的に活動するリーダーの育成も重要です。特に退職後の高齢男性を地域デビューさせたいですね。
 ゼミの大きなテーマは、運動を通じた健康づくり。実際に地域に行って現実を見て、話を聞き、住民の生活や困っていることを体感することが大事。高齢者に対する視点が変わることで、将来、福祉などの分野で活動する時に役立つと思います。