治療の場にいるメンバー全員がコミュニティを形成
私の専門分野は、精神科の治療においてセラピストが複数の患者さんに対して行なう「集団精神療法」で、現場ではグループアプローチと言われることもよくあります。なかでも特に注目しているのは、医療の現場を患者とスタッフによるコミュニティととらえる「治療共同体」という取り組みです。
治療共同体は、1940年代のイギリスで始まりました。もとは戦争神経症を治療していた、病院の取り組みだったという説が有力です。多くの兵士が入院する環境において、患者同士の助け合い、話し合いに効果があることが認められ導入されました。治療共同体の特徴は、毎日1回または2回、治療者と患者で構成される全メンバーが集まってグループミーティングを行うことです。どんな風にコミュニティを作っていくかを、話し合いを通じて決めていきます。患者たちは、日常生活に関わる具体的な事柄から、それにまつわる自分の気持ち、自分たちの病気についてなどを話し合うことで元気を取り戻し、社会生活を送れるまで回復していきます。