研究関連

中川一郎

ケアし支え合う「タッピングタッチ」を実践

誰でもどこでも簡単にできるよう工夫

 私の専門分野は臨床心理学で、「タッピングタッチ」と「ホリスティックケア」の実践と研究を行っています。タッピングタッチは、臨床心理学や東洋医学などの知見を生かし開発したホリスティック(全体的な)ケアです。両手を使い、左右交互に、ゆっくり優しく、ていねいにタッチすることを基本としています。コツがわかれば、誰でもどこでも簡単にできるよう工夫してあり、心理・福祉・医療などの専門分野に加え、東日本大震災などの被災者支援などにも活用されてきました。

 私たちは、環境や人間関係など多様な要素に影響を受けて暮らしています。そのため、タッピングタッチの開発と実践においては、心、体、関係性など、全体的なケアになるように配慮してきました。知識や技術を習得した専門家も必要ですが、家族・友人・地域の人たちが、お互いをケアすることで、安心感や落ち着きを取り戻すことができます。タッピングタッチでお互いをケアすると、体が楽になる、緊張感やストレスが軽減する、相手に対する優しさや思いやりが深まるなどの効果が見られます。副作用などの問題が起きないことも検証してきました。

難しく厳しいけれど自分自身も成⻑できる

 タッピングタッチを開発してから17年間、国内での活動に加えて、ロシア、カンボジア、ウガンダ、タイ、ベトナム、ネパール、米国、オーストラリアなど、様々な国でも紹介してきました。現在の課題としては、簡単なだけにその効果や有用性が十分に伝わりにくいことがあげられます。今後、海外でも多くの人や専門家に活用してもらう為に、大学における活動の一環として捉え、積極的に研究、教育、啓蒙活動に取り組んでいきたいと思っています。

 現在、タッピングタッチを専門的に学んだ認定インストラクター(一般社団法人タッピングタッチ協会)が全国に300名以上いて、一緒に実践や研究活動を行っています。これまでに東日本大震災や熊本地震の被災者支援なども行っており、最近は地域の家族や学校にも力を入れています。また4月から、本学の心理臨床センター長に就任しました。地域の人々が気軽にタッピングタッチを学べるセミナーなども行っていく予定です。

 大学の授業では、「臨床心理学概論」「臨床心理学実習」「公認心理士の職責」などを教えています。学生に学んで欲しいのは、人々を支援していく為には、知識や情報、技能だけでは十分ではないということ。人間性や社会性がとても大切ですので、幅広く学び続けてほしいと思います。心理学は、自分自身を知り、人をよく理解してサポートすることができる学問です。難しさも厳しさもありますが、人を助けながら自分も成長できるという面白さもあると思います。