日本の農業と通商課題

「日本の農業と通商課題」 農林水産省 国際経済課 国際専門官 田谷 慎一 氏

今回の講師は、農林水産省・国際部国際経済課の田谷慎一氏で、講義テーマは「日本の農業と通商課題」。農産物貿易や世界との貿易交渉などに深く関わる立場から、日本や世界の農業の現状、注目を集めるTPP交渉などを取り巻く環境について講義した。

田谷氏はまず「日本の農産物需給の構造」について、農産物の貿易構造や食料自給率の低下、食料消費構造などの最新データを基に「日本の食料は国際貿易に対する依存度が高く、食料自給率は低下傾向にある」と指摘。そして「農産物の輸出国として目立つのが米国とアルゼンチンなど。土地が広く効率的に生産できる国が市場を独占する傾向がある。日本は国土が狭く農業の効率化が進まないため、多く作り安く売るという勝負ができない」と説明。そのうえで日本の農業政策や、日本の農業を取り巻く現状などをデータで示し、「日本の農家は高齢化が進み従事者の数や耕地面積も減り、国内生産に占める農業の割合は徐々に減少している。耕作放棄地をいかに減らすかが農水省の大きな課題」だと強調。

さらにWTO、EPA、FTAなど様々な貿易交渉の概略や交渉内容、進捗状況などを説明。大詰めを迎えているTPPについても、その経緯や日本の対応について解説。「農産物の関税に関する厳しい交渉が予想されるが、農業以外の幅広い分野の交渉も行われるため、一般国民への影響も大きい。日本が交渉に参加した場合、複雑に立場の異なる国々と、どう個別に共闘して国益を広げるか。その戦略づくりが我々の重要な任務になる」と締めくくった。