【経営学部】地域企業連携実習(2022年度)後編

Wikipediaの記事作成に取り組んだ、学びの成果を発表

2月9日、稲岡大志准教授(経営学部)が担当する「地域企業連携実習」で取り組んできた、「志プロジェクト」の成果報告会を実施しました。今回は2022年9月からの15回の授業で、「Wikipedia」を利用してプロジェクト参加企業の記事編集・作成を進めてきました。(【前編】企業に関わる学びを深め、自らが情報発信する“知の担い手”を目指す)記事作成において工夫したこと、プロジェクトを通じての学びや気づきについて、チームごとに発表。参加企業の方との交流会も行いました。

プロジェクト参加企業
・株式会社アピックス 
 デジタル印刷、総合文書情報管理サービスを主体としたBPO事業を展開。
・日本鏡板工業株式会社
 化学・食品プラント施設などに用いられる、圧力容器用の鏡板を主に製造・販売。
・株式会社日本電気化学工業所
 住宅や高層ビルの建材、車両などに使用するアルミニウム表面処理加工の専門企業。
・千房ホールディングス株式会社
 お好み焼き「千房」の全国・海外展開、冷凍食品販売などを手がける、総合外食企業。

各チームが4カ月間の取り組みを報告

「志プロジェクト」は、地域の大学と企業との交流から相互理解を深め、次世代の人材を育成し、地域の活性化に貢献することを目指しています。授業を履修した22名の学生はWikipediaの記事作成に向け、担当する企業別の4グループに分かれ、出前授業、企業取材、自主的な情報収集、訪問レポート作成などに取り組みました。企業取材では、経営者からお話を聞き、工場を見学するといった貴重な経験をすることができました。これらの取り組みで得た情報をもとに、Wikipediaに掲載する内容を決定し、文章を作成して記事を完成。すでにWikipediaに記事が存在していた千房ホールディングス株式会社は記事の編集を行い、それ以外の3社は一から記事を作成しました。成果報告会では企業の方にも参加いただき、プロジェクトの学びの成果をプレゼンテーションしました。
参加企業への取材の様子は、こちらからご覧いただけます。
 
【発表内容】
株式会社アピックス チーム
初めはどのような事業をしているのか分からないことが多くありましたが、取材などでたくさんの情報を収集して事業内容を理解することができ、新たな知識を得られました。形のないサービスを提供している企業なので、事業内容を分かりやすく伝えようと考えて文章作成に取り組みました。ホームページにも記載されていない新しい情報を書き込めたところが良かったと思います。
 
日本鏡板工業株式会社 チーム
鏡板という製品の一般的な認知度が低いため、読む人に鏡板について理解してもらうことを最大の目標としました。初めて鏡板を知る人にも分かるような丁寧な説明文の作成を意識し、製造過程の一つ一つに写真を挿入して詳しく説明しました。シンボルマークの意味、創業の経緯、日本と海外の工場の役割など、取材時にお話を聞いて印象に残った内容を記事に盛り込みました。
 
株式会社日本電気化学工業所 チーム
一般消費者には知られていませんが、高い技術力を持っている企業だということが取材で分かりました。その技術について、なるべく専門用語を使わずに説明することを心がけました。Wikipediaで必要とされる客観的な文章を書くことが難しかったです。また、グループワークを通じての学びとしては、役割分担や情報共有、自ら行動することの大切さに気づけました。
 
千房ホールディングス株式会社 チーム
もとの記事をブラッシュアップするにあたり、お好み焼きブランドごとの代表メニューの紹介、これまでの事業活動を詳細に記載した年表、社会貢献活動など、多様な情報を新たに記載しました。企業から得られた情報だけでなく、新聞記事なども調べて経営者や事業内容について理解しようと努めました。チーム内で意見が異なることもあり、調整しながら進めていくのが大変だと感じました。

完成したWikipediaに、企業から高い評価

発表後、チームごとに分かれて企業の方と学生との交流会を実施。企業からは「思っていた以上の頑張りがみられて感動した」と出来栄えをほめていただいたほか、就活においてのアドバイス、Wikipediaの作成の仕方など、さまざまな話題で盛り上がりました。4カ月間かけて交流を重ねてきたからこそ、リラックスして意見を交わせる関係性が築けたのだと感じられる時間を過ごせました。
 
最後に、稲岡准教授が「かなり大変な取り組みだったと思いますが、それに見合った成果が得られたのではないでしょうか。この経験を今後の学びや就職活動に活かしてほしい」と締めくくりました。
 
企業からは、「学生たちの取り組みの様子に真剣さが感じられた。参加した企業に有形の資産としてのWikipediaが残り、企業のインターンシップとしても有益な手段だと考えられる」「一般的になじみの薄い分野について学生に理解してもらえただけでなく、分かりやすい言葉で広く発信してもらえたことが良かった」「プロジェクトでの学生との交流を通じ、もっと大学生に当社を知ってもらいたいと思うようになった」といった感想が寄せられました。
 
授業時間外にも多くの時間を費やして取り組んだ、今回の「志プロジェクト」。学生たちは、経営に関する考え方や仕事の仕組みなどを学んで企業理解を深めたほか、広く人の目に触れるメディアでの情報発信を経験しました。また、就活に向けての新たな視点や気づきも得られました。企業との直接的な交流によって多くの学びを獲得できることを実感するプロジェクトとなりました。

【教員・学生の声】

●教員の声
稲岡大志准教授
Wikipediaの記事作成に取り組むことで、事実に基づくこと、出典を明らかにすることといった、学術的文章の作法の基本を理解できたことが学びの一つ。自ら情報収集を行って作成した記事を公共のメディアに公開することができ、授業の目標としていた“知の担い手”になるという目標を達成できたと考えています。また、経営者へのインタビューや工場見学など、さまざまな観点から企業を見ることができたのは、学生にとって得がたい経験となりました。製造業や飲食業など学生があまり目を向けない中小企業の中にも、優良で魅力的な企業と仕事があることにも気づけたことでしょう。就職活動に向けて良いヒントを得られたのではないかと思っています。
 
●学生の声
板倉晶さん(経営学部ビジネス法学科2年)
企業活動のすべてにおいて、理念や目的を持って行われていることが分かりました。そうした企業の思いがしっかりと伝わるように考えて記事を作成しました。
 
岡本雄大さん(経営学部第1部経営学科4年)
難しさを感じたのは、不特定多数の人に伝える文章を作ることです。同じ情報でも伝え方や見せ方によってまったく印象が変わると気づいて勉強になりました。
 
昌原裕貴さん(経営学部第1部経営学科2年)
この授業を履修する前はWikipediaが編集できることさえも知りませんでした。授業を通じて自分の力で編集できるようになり、感動しています。