『日本経済思想史研究』21号、pp.1-21(2021年3月 査読あり)に投稿したこの論文は、これまでほとんど注目されてこなかった日野資秀(1867−1903)の存在を経済学教育思想あるいは経済学教育史のなかで浮き上がらせようとしています。
彼は、日本が経済発展を遂げるには国民全体への経済学普及が重要だと説き、小学校からの経済学教育を主張するなど、経済学の啓蒙活動に尽力した人物です。ただ彼は歴史のなかに埋もれてしまっていました。この日野の経済学教育構想を、同じく同時期に経済学教育を推進していた天野為之と比較することで、日野が明治前期の三大経済学者の1人に数えられた天野に匹敵するか、その先駆とも言える経済学啓蒙家であることを明らかにしました。
また、日野はイギリス経済学会(現王立経済学会)の機関紙The Economic Journalに、添田壽一の『財政通論』(1892)への書評を掲載しています。この経緯についても関西学院大学が所蔵する「フォックスウェル文書」から明らかにし、イギリス経済学者と日本人とのつながりや影響関係の一端を紹介しています。