大阪から海洋プラスチックごみをなくす
颯爽と登壇された小泉氏は、「一昨日までダボス会議(※)出席のためにスイスにいたのですが、皆さんとのお約束を果たすため、1泊3日のほぼ直行で駆けつけました」と、疲れをまったく感じさせない笑顔で講演をスタート。
「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン推進議員連盟(通称:海プラ議連)」の会長を務められている小泉氏はまず、大阪ブルー・オーシャン・ビジョンについて知っているか質問されました。
※ダボス会議
スイス・ジュネーブに本拠を置く非営利財団「世界経済フォーラム」が毎年1月に、スイス東部の保養地ダボスで開催する年次総会。世界を代表する政治家や実業家が一堂に会し、世界経済や環境問題など幅広いテーマで討議を行う。
この時、講演会やイベント会場でQ&Aなどの回答・投票・集計をスマホでライブに行えるクラウドサービス「Slido」を使用。聴講者は、スクリーンに映し出されたQRコードをスマホで読み取って投票し、2割が知っている、8割が知らないという結果が判明しました。
「やはり知らない方が多いですね。ただ、講演会のお話をいただいた時、大阪の方にも知られてない、だけど絶対に知ってほしいテーマだと思い、これを選択しました」
「海プラ議連」では、日本は2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減する目標を掲げ、87の国と地域が共有しています(2021年5月現在)。これを提唱したのは、時の総理大臣・故安倍晋三氏です。安倍氏はビジョン採択後、「海プラ議連」の最高顧問に就任し、プラスチック循環資源戦略を牽引されていました。小泉氏は、この安倍氏の遺志を受け継ぎ、脱プラスチックを推進されています。
脱プラスチックがさまざまな課題解決のカギ
海洋プラスチックごみをはじめ、世界がプラスチックの削減に取り組む理由として、環境汚染、地球温暖化、石油資源枯渇など、世界規模での解決が必要なあらゆる課題につながっているからと小泉氏は言います。
「今回のダボス会議の重要課題として討論されたのがエネルギー問題です。スイスをはじめヨーロッパの電気料金は、ロシアのウクライナ侵攻の影響もあり、猛烈に高騰しています。これを抑えるためには、石油への依存と、火力発電などによる環境汚染、地球温暖化の解決にもつながる、再生可能エネルギーの活用を早急に進めていかなければなりません」
日本でも電気料金の高騰だけでなく物価高も続いています。これも石油依存が関連していると小泉氏は指摘します。
「講演会の前、大阪経済大学の近くにある唐揚げ屋さんに立ち寄りました。私はこの唐揚げ屋さんのような庶民的であったかいお店が大好きです。衣の小麦粉も揚げ油も高騰する中、学生さんのためにも安く提供するよう努められていますね。日本は石油だけでなく、多くの食料も輸入に依存しています。それらは巨大なタンカーなどで運ばれており、当然タンカーの運航には燃料となる石油が大量に必要です。こういった物流はもちろん、石油はさきほどからお話しているプラスチックをはじめ、さまざまなモノの原材料でもあり、それらの製造にも、火力発電をはじめ発電と電力供給にも使われています。つまり、石油の価格が高騰すれば、おのずと物価上昇を招いてしまうのです」
今アクションを起こせば、未来は明るい
講演会は終盤にさしかかり、小泉氏はプラスチックに関する国会でのあるエピソードを披露されました。
「私が環境大臣時代にレジ袋有料化をはじめ『プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律』(通称:プラ新法)を施行しました。最近は、コンビニやファストフードで紙ストローが導入され、マイバックやマイボトルを使う人が増えていますね。実は、以前まで国会ではマイボトルが使用禁止だったんです。でも、国民の方々に脱プラスチックをお願いしている私がマイボトルを使っていないなんて筋違いでしょ。それで、あえてマイボトルを国会(委員会)に持参したことがニュースとなり、なぜ禁止なのか皆さまの疑問や批判の声によって使用が許可されました」
今回、会場では9歳と12歳の小学生が聴講していました。二人を見つけた小泉氏は、「今、私たちが行動を変えなければ、海の中のプラスチックごみの量が海洋の魚の全重量を超えると推測されています。国会のマイボトルの話もそうですが、何かを変える、人が変わることはなかなか難しい、しかし、その方が幸せになるのであれば行動するべきです。二人が現在の私と同じぐらいの年齢になる2050年、プラスチックごみのないきれいな海を残してあげることが大人の約束です」と、やさしく話しかけていました。
小泉氏のさまざまなお話に聴講者は聞き入り、ご本人もまだお話されたい様子でしたが、「そろそろ、きよしさんをお招きしなければなりませんね」と小泉氏。すると、西川きよし氏が登壇されました。
「きよしさんは国会議員の先輩であり、私がきよしさんに環境省サステナビリティ広報大使就任を依頼しました。大阪ブルー・オーシャン・ビジョンを盛り上げ、大阪での脱プラスチックを推し進めていただきたかったからです」と小泉氏。「私が国会議員最後の年の総理大臣がお父様の小泉純一郎さんでした。何かご縁があるのでしょうね」と答える西川氏に、「やはり大阪のことは、よそからやってきた国会議員なんかじゃなく、地元のことをよく知る、人気者が訴えてくださるのが効果的ですから」と小泉氏は期待を寄せます。