お知らせ・ニュース

ニュース

【実施報告】創立90周年記念講演会第5回「大阪が世界を動かす時代〜大阪ブルー・オーシャン・ビジョンとは〜」

2023年03月30日(木)

プラスチック削減で世界も毎日の暮らしも良い方向へ

大阪経済大学では、90周年を迎えた2022年9月から「公共共創社会へ~VUCAの時代~」と題して記念講演会を毎月開催。社会課題の解決に取り組む専門家・企業家を招聘して貴重なお話をいただいており、2023年1月20日に最終回を迎えました。
 
講演会にまず登壇したのは、元環境大臣の小泉進次郎衆議院議員。テーマは、2019年6月にG20大阪サミットで共有された「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」です。
 
さらに、講演会後半は、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」の施行(2022年4月)に伴い、環境省サステナビリティ広報大使に就任された西川きよし氏がご登壇。その後、小泉氏と西川氏、大阪経済大学大樟春秋会会長 森田俊作氏(大和リース株式会社代表取締役会長)、本学 山本俊一郎学長の4人で、プラスチック循環資源戦略やサーキュラー・エコノミー(循環経済)などの官民一体による推進をテーマに座談会を行いました。
当日の模様をご紹介します。

【プロフィール】
小泉進次郎氏
1981年神奈川県横須賀市生まれ。関東学院大学経済学部卒業後、2006年米国コロンビア大学院政治学部修士号取得。米国戦略国際問題研究所研究員を経て、衆議院議員小泉純一郎氏秘書を務めた後、2009年衆議院議員初当選し現在5期目。環境大臣(第27・28代)、内閣府特命担当大臣(原子力防災担当)、内閣府大臣政務官兼復興大臣政務官などを歴任。
 
西川きよし氏
1946年高知県生まれ。1966年漫才コンビ「横山やすし・西川きよし」を結成。テレビ番組「素人名人会」「パンチDEデート」「プロポーズ大作戦」の司会を務めるなど、やすきよブームを巻き起こす。上方漫才大賞、文化庁芸術祭優秀賞、ほか受賞歴多数。1986年には、参議院議員選挙に初当選。3期18年、議員を務めた。2016年には旭日重光章を受章。

 
大阪から海洋プラスチックごみをなくす
颯爽と登壇された小泉氏は、「一昨日までダボス会議(※)出席のためにスイスにいたのですが、皆さんとのお約束を果たすため、1泊3日のほぼ直行で駆けつけました」と、疲れをまったく感じさせない笑顔で講演をスタート。
「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン推進議員連盟(通称:海プラ議連)」の会長を務められている小泉氏はまず、大阪ブルー・オーシャン・ビジョンについて知っているか質問されました。
※ダボス会議
スイス・ジュネーブに本拠を置く非営利財団「世界経済フォーラム」が毎年1月に、スイス東部の保養地ダボスで開催する年次総会。世界を代表する政治家や実業家が一堂に会し、世界経済や環境問題など幅広いテーマで討議を行う。
 
この時、講演会やイベント会場でQ&Aなどの回答・投票・集計をスマホでライブに行えるクラウドサービス「Slido」を使用。聴講者は、スクリーンに映し出されたQRコードをスマホで読み取って投票し、2割が知っている、8割が知らないという結果が判明しました。
「やはり知らない方が多いですね。ただ、講演会のお話をいただいた時、大阪の方にも知られてない、だけど絶対に知ってほしいテーマだと思い、これを選択しました」
 
「海プラ議連」では、日本は2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減する目標を掲げ、87の国と地域が共有しています(2021年5月現在)。これを提唱したのは、時の総理大臣・故安倍晋三氏です。安倍氏はビジョン採択後、「海プラ議連」の最高顧問に就任し、プラスチック循環資源戦略を牽引されていました。小泉氏は、この安倍氏の遺志を受け継ぎ、脱プラスチックを推進されています。
 
 
脱プラスチックがさまざまな課題解決のカギ
海洋プラスチックごみをはじめ、世界がプラスチックの削減に取り組む理由として、環境汚染、地球温暖化、石油資源枯渇など、世界規模での解決が必要なあらゆる課題につながっているからと小泉氏は言います。
 
「今回のダボス会議の重要課題として討論されたのがエネルギー問題です。スイスをはじめヨーロッパの電気料金は、ロシアのウクライナ侵攻の影響もあり、猛烈に高騰しています。これを抑えるためには、石油への依存と、火力発電などによる環境汚染、地球温暖化の解決にもつながる、再生可能エネルギーの活用を早急に進めていかなければなりません」
日本でも電気料金の高騰だけでなく物価高も続いています。これも石油依存が関連していると小泉氏は指摘します。
 
「講演会の前、大阪経済大学の近くにある唐揚げ屋さんに立ち寄りました。私はこの唐揚げ屋さんのような庶民的であったかいお店が大好きです。衣の小麦粉も揚げ油も高騰する中、学生さんのためにも安く提供するよう努められていますね。日本は石油だけでなく、多くの食料も輸入に依存しています。それらは巨大なタンカーなどで運ばれており、当然タンカーの運航には燃料となる石油が大量に必要です。こういった物流はもちろん、石油はさきほどからお話しているプラスチックをはじめ、さまざまなモノの原材料でもあり、それらの製造にも、火力発電をはじめ発電と電力供給にも使われています。つまり、石油の価格が高騰すれば、おのずと物価上昇を招いてしまうのです」
 
 
今アクションを起こせば、未来は明るい
講演会は終盤にさしかかり、小泉氏はプラスチックに関する国会でのあるエピソードを披露されました。
 
「私が環境大臣時代にレジ袋有料化をはじめ『プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律』(通称:プラ新法)を施行しました。最近は、コンビニやファストフードで紙ストローが導入され、マイバックやマイボトルを使う人が増えていますね。実は、以前まで国会ではマイボトルが使用禁止だったんです。でも、国民の方々に脱プラスチックをお願いしている私がマイボトルを使っていないなんて筋違いでしょ。それで、あえてマイボトルを国会(委員会)に持参したことがニュースとなり、なぜ禁止なのか皆さまの疑問や批判の声によって使用が許可されました」
 
今回、会場では9歳と12歳の小学生が聴講していました。二人を見つけた小泉氏は、「今、私たちが行動を変えなければ、海の中のプラスチックごみの量が海洋の魚の全重量を超えると推測されています。国会のマイボトルの話もそうですが、何かを変える、人が変わることはなかなか難しい、しかし、その方が幸せになるのであれば行動するべきです。二人が現在の私と同じぐらいの年齢になる2050年、プラスチックごみのないきれいな海を残してあげることが大人の約束です」と、やさしく話しかけていました。
 
小泉氏のさまざまなお話に聴講者は聞き入り、ご本人もまだお話されたい様子でしたが、「そろそろ、きよしさんをお招きしなければなりませんね」と小泉氏。すると、西川きよし氏が登壇されました。
 
「きよしさんは国会議員の先輩であり、私がきよしさんに環境省サステナビリティ広報大使就任を依頼しました。大阪ブルー・オーシャン・ビジョンを盛り上げ、大阪での脱プラスチックを推し進めていただきたかったからです」と小泉氏。「私が国会議員最後の年の総理大臣がお父様の小泉純一郎さんでした。何かご縁があるのでしょうね」と答える西川氏に、「やはり大阪のことは、よそからやってきた国会議員なんかじゃなく、地元のことをよく知る、人気者が訴えてくださるのが効果的ですから」と小泉氏は期待を寄せます。

 
脱プラスチックも「小さなことからコツコツと」
お二人の関係性など小泉氏と西川氏のお話の後、森田会長、山本学長も登壇し、座談会がスタートしました。
 
まず、山本学長が西川氏に環境省サステナビリティ広報大使就任を依頼した経緯を改めてお二人に尋ねると、「知りませんよ。進次郎さんからいきなり電話がかかってきたんです」と訴える西川氏に会場は爆笑。「プラスチックを減らすには、一人ひとりがちょっとずつでもやることが大切。『小さなことからコツコツと』といえば、きよしさんでしょう」との小泉氏の選考理由に聴講者も納得の様子です。
 
座談会では、こうした漫才のような掛け合いが繰り広げられ、議論もどんどん展開されていきました。
 
その中で、森田会長は「私は90周年記念講演会のテーマである『公共共創社会』について、常々考え、登壇した過去4回の座談会でも述べているのですが、これからの日本、世界において重要なのは、自助・共助・公助の中の一つである『共助』だと思います。共助とは、良い取り組みに対して協力・応援して助け合う、自分ができることをまさにコツコツとやることです。最近は社会課題に気軽に参画できるカジュアル・ソーシャル・アクションも進んでいますが、学生をはじめ、Z世代にはSNSの『いいね!』が浸透しているのか、いいものはいいと素直に認めて行動します。これは共助という観点からも私たち大人や政治家が見習うべきかと思います」と話されました。
 
また、西川氏は環境省サステナビリティ広報大使として、「どんなことをすれば、皆さんがプラスチック削減に動いてくださるか、小中学生や高校生、大学生の方にもアイデアを出して欲しいです」とアピールされました。
 
二人が話された「若い力」を受けて、小泉氏は聴講する学生たちに力強いメッセージを送られました。
「これからの時代は、社会も暮らしも世の中の形が本当に変わります。経済もサーキュラー・エコノミー(循環経済)が主流になります。今日、紹介したプラスチックも、資源も、食料もすべて循環を考えることが重要です。それと、大阪といえば粉もんですよね。関西・大阪万博でも販売されると思いますが、使う小麦粉は大半が輸入品です。しかし、これを米粉に変えればどうでしょう。日本はお米の国ですから、海外に依存しなくても賄えます。しかも、世界に発信すれば巨大なビジネスになるわけです。日本はさまざまな物の材料となり、循環も可能な木にも恵まれています。こういった強みを活かし、世界に目を向けて、脱プラスチック・脱炭素社会、循環型経済をリードしていきましょう」
 
今回で創立90周年記念講演会は終了です。山本学長からは「5回とも参加くださった聴講者も多く感謝いたします。今後もこういった学びの場を設けてお役に立ちたい、そして大阪経済大学のファンを増やしていきたいと思っています」と締めくくりました。大阪経済大学はこれからも社会、地域、人々と強くつながっていきます。