解釈は
ひとつじゃない。
世の中で起こる事象や物事には
さまざまな側面があり、捉え方は多様です。
本学にある5学部それぞれの視点から、
ひとつのキーワードを読み解き、
研究対象とするならば
どのようなアプローチをとるか考えてみました。
KEYWORD # 大阪
江戸時代から「商人の町」として栄え、現代も日本第2の都市として、ビジネスや観光で重要な役割を担っている大阪。グルメやお笑いなど、独自の文化を持つ魅力的な地域です。
GDP(国内総生産)という言葉は、みなさん聞いたことがあるかと思います。その「市」版、「市内総生産」という経済指標があるのはご存知でしょうか?大阪市は、日本の政令指定都市の中で最も高い市内総生産19兆5160億円(2020年度)を誇ります。これは世界的にみても高い水準で、ギリシャ、イラク、カザフスタンと同等レベルの生産力があるということになります。名実ともに大都市である大阪市。しかしそんな大阪でも、実は1930年代後半から経済の地盤沈下がささやかれていました。目まぐるしく変化する世の中で、大阪はこれからどのような都市を目指していくべきでしょうか?
江戸時代まで遡ると、かつて大阪は「天下の台所」として全国からのモノの集散地、流通の中心(商業都市)として重要な役割を果たしていました。明治維新によって首都東京が誕生すると政治経済構造が変わり、大阪商人は大きな打撃を受けましたが、その低迷を救ったのは製造業でした。造幣局・大阪砲兵工廠・堺紡績所の官営模範工場が設立、その後民間企業による産業革命を経て、新たに工業都市として発展。日清戦争の頃から「東洋のマンチェスター」と呼ばれ、1920~30年代には経済が発展し、大都市に成長しました。この時期の大阪を創ったキーパーソンとして、小林一三(こばやし いちぞう)と關一(せき はじめ)※の存在は欠かせません。
その後、大阪経済は、日中戦争、第二次世界大戦で大打撃を受け、そこから復興を果たしたものの、高度成長期を経て、東京一極集中により相対的に大阪の地位はますます低下。そこから飛躍的な成長がないまま、現在に至っています。少子高齢化や人口減少の影響を考えると、今後の大都市・大阪の未来は不透明だと言わざるを得ません。
だからこそ、みなさんと一緒に考えたいのです。未来の大阪の明るい姿を。ぜひ、次世代の小林一三、關一に出会いたい。そんな思いで私は学生たちと関わっています。私の授業「都市経済論」では、経済学的観点から都市を分析します。具体的には人口構造、産業構造、階層・階級構造のデータを掛け合わせ、大阪の現在の姿と課題を把握。さらに大阪の経済史を学び、過去から未来を見通す力を育みます。唯一無二のユニークな都市・大阪で、大阪の未来を考えてみませんか。
今、世界的な観光名所として超有名な広告が二つあるのを知っていますか。一つはニューヨークにあります。自由の女神ではありません。金融街として有名なウォールストリートにある「Fearless Girl」という広告です。これは金融の世界での女性の地位向上を訴える「恐れを知らない少女」の銅像で、ニューヨークにある金融コンサルタント会社の広告です。そして、もう一つは大阪にあるのです。道頓堀にあるグリ下で有名なあの「グリコの看板」です。
広告と聞くと、youtubeなどの動画閲覧サイトに出てくる0.1秒でも早くスキップしたい動画広告を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。無くなってしまえばいいのに、と思っていませんか。でもグリコの看板、かに道楽、くいだおれ人形、通天閣。海外からの観光客の人たちを惹きつける大阪の魅力的な街の風景を作っているのは広告なのです。イギリスのユーロモニターインターナショナル社が2023年に発表した世界の観光都市魅力度ランキングでも大阪は16位と高評価を得ています。これはグリコの看板に感動した観光客の人たちがSNSに大量に投稿してくれたおかげでもあります。大阪の広告は世界中でバズっているのです。
道頓堀のあの場所にグリコの屋外広告が作られたのは1935年のことでした。その頃は33mもある巨大な広告塔でした。1930年代の大阪は東京よりも人口や経済規模が大きかった時期もあり、この頃に今に繋がる広告の都・大阪の原型が生まれたのです。近年では、京セラドーム大阪、ヤンマースタジアム長居、エディオンアリーナといった有名な施設名に広告として企業名を付けることで、より魅力的に感じさせるネーミングライツも大阪では数多く見られる新しい広告のやり方です。大阪経済大学も「○◯大経大」のように大阪の企業の広告を付けてみると、さらに大阪の大学っぽくなり、いっそう魅力的になるかも知れません。
「スポーツが好き」「運動部での経験を活かしたい」と考える人には、大阪をフィールドとした本学部での学びがピッタリかもしれません。スポーツは、自分がプレイヤーとして楽しむだけでなく、“地域(ひと・まち)を元気にする力”があるからです。
例えば私のゼミでは、2019年度から継続的に大阪府能勢町との連携によって、児童の体力向上を目指すプロジェクトを実践しています。能勢町の小学校で、体育の授業や朝の会などに、疾走能力改善のための体操を実施。その結果、平均を大きく下回っていた50m走のタイムが、4年後にはほぼ平均値となりました。
また全国的に見ると、大阪はたくさんのプロスポーツチームがあったり、スポーツ施設が充実していたりと、スポーツが身近な地域です。だからこそ、スポーツで地域を元気にしたいと考える人にはうってつけの研究・実践フィールドと言えるでしょう。スポーツ科学コースに所属する他の先生方も、ソフト面からハード面まで、さまざまな形で大阪に携わっていますよ。
これまで運動部で真剣に競技と向き合ってきた高校生のみなさんはきっと、「どうすれば上達するだろう、どうすれば勝負に勝てるだろう」といった「問い」を持ち、工夫や練習を重ねてきたと思います。その「問い」を、ぜひ社会の課題に向けてみてください。「どうすれば子どもたちの体力が向上するだろう」、「どうすればスポーツ施設を有効活用できるだろう」、「どうすればスポーツイベントに集客できるだろう」。さまざまな課題にあなたの経験が活かせるのではないでしょうか。
ちょっと想像してみましょう。ある日、言葉も文化も異なる外国の方が、あなたの家の隣に引っ越してきました。あなたの日常にはどのような変化があるでしょう? それとも何も変化は起こらないでしょうか?
実は大阪市の外国人住民数は、およそ17万人(※2023年12月末時点)。全市民の約6.1%を占め、人口・比率とも政令指定都市の中で最多となっています。中国、韓国など近隣国のほか、ベトナム、ネパール、インド、インドネシアなどから大阪へ来られる方が多く、今後ますます外国人住民が増えていくことが予想されます。では、「大阪のまちづくり」をしていこうと考えたとき、外国にルーツを持つ方と昔から地元に暮らす方々とは、どのように協力し合っていくべきでしょうか? もちろん、お互いに理解し、尊重し、良い関係を築くことが理想です。ですが、日本人同士でさえ、移住者と地元住民の間でのトラブルが発生します。移住者が言葉も文化も異なる相手ならば、一層、まちづくりは複雑になるのではないでしょうか。
そんなときに重要なのが、多文化への理解と、自分たち自身への理解です。大阪市民であれば、大阪という土地の歴史や文化、大阪人特有の気質など、普段はあまり考えることなどないかもしれませんが、そのルーツを知り、“過去からの歴史の流れの先に現在がある”という視点を持ってみてください。それが自分の軸となり、相手との信頼関係構築の第一歩となるはずです。
さて、もしも隣家に外国人が引っ越してきたら。それは、あなたにとってポジティブな変化を起こすチャンスかもしれません。自分が暮らす地域を知り、自分自身を知り、相手を知ろうとするチャンス。「さまざまな人と一緒に、より良い社会を築いていきたい」と思えるあなたには、グローバル人材としての素質があるのです。
大阪といえば「お笑いのまち」というイメージがありますね。私の専門分野である知的財産法(※)の観点から、お笑いについて考えてみたいと思います。例えば、お笑い芸人が考案した「一発芸」に著作権(=自分が創作したものを無断でコピーや模倣されない権利)はあるのでしょうか?
一般的に、短い単語やフレーズだけではオリジナリティがないため「著作性が低い」と判断されます。けれどもそのフレーズに独特のポーズや表情、衣装などが一体となった状態で、一発芸として披露されれば、それは「著作物」として認められる可能性が高いでしょう。そのため、お笑い芸人Aさんの考案した一発芸を、そっくりそのまま真似してお笑い芸人Bさんが披露した場合、著作権侵害にあたる可能性があります。
ただしそれはAさんがBさんのことを「著作権侵害された」と訴えた場合に限って問題化します。実際のお笑いの世界では、相乗効果で大きな笑いを生んだり、真似されることがオイシイと考えられたりしますので、訴訟になることはほとんどないでしょう。 それでは、一発芸や漫才の元になっている抽象的なアイデアはどうでしょうか?
実はこれには著作権がありません。と言うのも、著作権が発生するのは具体的な表現に対してのみだからです。そもそも著作権は、文化が発展することを目的としているので、良いアイデアはむしろみんなで共有した方がいい、という考えが根底にあるのです。
「大阪」というキーワードから、お笑いの著作権について考えてみましたが、いかがだったでしょうか? 身近なところに知的財産があり、それにまつわる法制度があることを感じてもらえたなら幸いです。本学の経営学部は、「経営と法の融合」をスローガンに掲げています。切ってもきれない関係にあるビジネスと法律。どちらも学びたいと思う方や、優秀なビジネスパーソンを目指したいという方には、ぜひ本学科で学んでほしいですね。