共通のテーマを学部ごとの視点で語り 新たな価値をみつけよう keyword talk キーワードトーク

解釈は
ひとつじゃない。

世の中で起こる事象や物事には
さまざまな側面があり、捉え方は多様です。
本学にある5学部それぞれの視点から、
ひとつのキーワードを読み解き、
研究対象とするならば
どのようなアプローチをとるか考えてみました。

共通のテーマを学部ごとの視点で語り 新たな価値をみつけよう keyword talk

解釈はひとつじゃない。

keyword list キーワード一覧

共通のテーマを学部ごとの視点で語り 新たな価値をみつけよう keyword talk

KEYWORD # 脱炭素

花登 駿介 講師の写真 花登 駿介 講師

CO2に価格をつけて、課題解決を目指す!

経済学部

宮武 記章 教授の写真 宮武 記章 教授

原発は悪?脱炭素と切っても切れない電力問題

情報社会学部

志垣 智子 講師の写真 志垣 智子 講師

“自然と共生する暮らし”のヒントは里山にあり!

人間科学部

山谷 清秀 講師の写真 山谷 清秀 講師

脱炭素を実現するのは、誰の役目?

国際共創学部

佐藤 愛 教授の写真 佐藤 愛 教授

地球環境課題と、わたしの人生設計。 「ESG投資」がどちらにも役立つかもしれない。

経営学部

気候変動対策として、CO₂排出を減らし、最終的にゼロにする取り組みです。再生可能エネルギーの活用、省エネ技術の導入、電気自動車の普及などが含まれ、世界規模で推進されています。

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経済学部 CO2に価格をつけて、課題解決を目指す!

 制度が変わることで、私たちの行動も変わることがあります。例えば、これまで無料だった公衆トイレが有料になったらどうでしょうか。無駄な出費を避けるために、外出前にトイレを済ませたり、カフェなどでトイレを利用したり、トイレに行く回数を減らすために水分摂取を控えたりするかもしれません。このように、仕組みや制度が行動に影響を与えることがあるのです。

 脱炭素の実現に向けた取り組みの一つに「カーボンプライシング」があります。これはCO2に価格をつけることで、CO2排出者(=主に企業)の行動に変化を起こし、CO2排出量を削減するための制度です。代表的な方法として、「炭素税」と「排出権取引制度」があります。
 「炭素税」は、企業が排出するCO2の量に応じて課税する制度です。例えば、日本ではCO2排出量1トンあたり289円の税が課されています。もう一つの「排出権取引制度」は、企業ごとに温室効果ガスの排出量に上限を設け、その枠を売買できる仕組みです。排出量の上限を超えた企業は、下回る企業から排出枠を買って補完することになります。

 これらの制度が効果的な理由は、CO2排出量を削減することで、企業が直接的なメリットを得られるからです。CO2排出に関する規制がない場合、企業が排出量を削減しても大きな利益は生じませんが、炭素税が導入されると、CO2を多く排出するほど課税されるため、排出量を減らすことで税負担を軽減できます。また、排出権取引制度では、排出量を抑えた企業が排出枠を売ることで利益を得ることができるため、削減のインセンティブが生まれます。

 このように、炭素税や排出権取引制度は企業の行動を変え、脱炭素に貢献します。経済学は、このような仕組みを通じて社会や企業の行動を分析し、より良い社会の実現を目指します。環境問題などの社会問題、経済の仕組みに興味がある方は、ぜひ経済学を学んでみてほしいですね。

関連ワード

  • ゲーム理論
  • ミクロ経済
  • 公共経済学
  • 理論経済学
  • 環境経済学

花登 駿介 講師

2021年から大阪経済大学経済学部に着任。専門分野はミクロ経済、理論経済学。ゲーム理論の観点から交渉を分析している。

情報社会学部 原発は悪?脱炭素と切っても切れない電力問題

 最近「電気代が上がった」と誰かが言っているのを耳にしたことはありませんか? 電気代、ひいては日本の電力に関する課題は、「脱炭素」と深く関わっています。私は環境会計(※注)を専門とし、長年日本の電力会社の動向を注視してきました。会計の話からは少し離れますが、電力問題についてお話しできればと思います。

 さて、あなたは「原子力発電」(以下、原発)に対して、どんなイメージを持っているでしょうか? 「事故が起こると危険」「原発は全て廃止すべきだ」「処理方法に問題がある」。そのような意見が大多数かもしれません。日本は、2011年東日本大震災の原発事故をきっかけに、脱原発に大きく舵を切ってきました。

 しかし、世界的にみると原発に対するイメージはもっとポジティブです。というのも、原発はCO2の排出がなく、脱炭素に効果的だからです。石油や天然ガスより資源調達が安定していて低コストというメリットもあります。日本ではあまり大きく報道されていませんが、2023年に開催された国際会議COP28では、「2050年までに世界全体の原子力発電容量を3倍(2020年比)にする」という目標も掲げられました。

 原発に限らず、物事には良い面と悪い面があります。太陽光発電や風力発電などの「再生可能エネルギー」も同様。CO2を排出せずクリーンなイメージがありますが、緑豊かな山を切り拓いて太陽光パネルを設置するとしたら、それは本当に環境にやさしいと言えるでしょうか? 風力発電にも騒音被害や多くの野鳥が風車に衝突する問題が起こっています。

 一方の情報や意見を鵜呑みにするのではなく、多面的・中立的に考えることが大切です。「電気代が上がった」という愚痴を聞き流すのではなく、電気代が決まる背景や世界情勢に目を向けてみましょう。あなたの視野が、グンと広がるはずです。

 情報社会学部では、情報との向き合い方や情報の分析・活用方法を学び、さらに経営・経済学や社会学との組み合わせで、課題解決を目指すことができます。社会課題に関心がある方には、ぜひおすすめしたいですね。

  • ※環境会計…企業が取り組んでいる環境保全活動に関する費用と効果を数値化することで、その環境保全の取り組みを評価する会計手法

関連ワード

  • メディアリテラシー
  • 会計学
  • 情報学
  • 現代ビジネス
  • 環境会計
  • 電力会社

宮武 記章 教授

2008年に大阪経済大学に就任。2018年から情報社会学部教授。専門分野は会計学、環境会計。電力会社の会計問題について研究している。原発や再生可能エネルギーのあり方、電力会社の財政状態を、会計学の側面から調査・分析している。趣味は旅行で特に海の綺麗な南の島が好き。

人間科学部 “自然と共生する暮らし”のヒントは里山にあり!

脱炭素社会の実現に向けて、個人レベルでできることは何でしょうか?私の専門である住居学やまちづくりの観点から考えてみたいと思います。

まず一つ、誰でもできるのは「多少の不便に慣れること」です。イメージしやすいのは、農村や里山での暮らし。農村は夜辺りが真っ暗になるため夜更かしせずに早寝をする人が多いですが、これは照明や家電などの使用量を抑え節電できていると言えます。コンビニがあまりないので、余計なモノを買うこともありません。そして夏は暑く、冬は寒いです。都会の快適で便利な生活とは全く異なりますが、“自然と共生する暮らし方”が里山にはあります。そもそも気候変動問題は人間が「便利さ」を求めすぎた結果。だとすれば反対に、不便に慣れる、不便さを許せることも大切なのではないでしょうか。

二つ目にできるアクションとしては、「資源循環型の、地球にやさしい商品を選ぶ」ことです。例えば家を建てる場合には、木造を選びます。また太陽光の入りやすい間取りにして室内を暖かく保つなどの工夫(=パッシブデザイン)を取り入れると良いでしょう。

世界的課題である気候変動や、脱炭素。これらに対し日本がどんな政策を取るのかについて、私たちは有権者として間接的にしか決めることができません。けれど、個人の暮らし方、生き方は自分で決めることができます。ぜひ一度、自分の生活や理想の姿を見つめ直してみてはいかがでしょうか。

人間科学部社会ライフデザインコースでは、健康、安心・安全、持続可能といった観点から私たちの生活環境について考えます。人との関わりあいや、地域での暮らし、ウェルビーイング(幸福で肉体的、精神的、社会的すべてにおいて満たされた状態)に関心がある人には、興味深い内容が揃っていると思いますよ。

  • ※私のゼミや授業では、フィールド先として地方へ出かけて里山体験をすることもあります。写真は、日本のふるさと100選に選ばれた三重県尾鷲市須賀利地区。大切にしている風習、先達の知恵を学びます。高台にある寺社等の避難場所を確認しながら地域を歩きました。

関連ワード

  • ウェルビーイング
  • フィールドワーク
  • 住居学
  • 持続可能なまちづくり
  • 災害からいのちを守る
  • 社会ライフデザイン
  • 自然との共生

志垣 智子 講師

2023年から大阪経済大学人間科学部に着任。専門領域は住宅学、地域防災。都市や中山間・離島地域を対象とした、住み続けられるまちづくりを構想。防災や防犯、高齢者福祉の観点から、地域共創による“いのちを守るまちづくり”を目指す。趣味は旅行で、最近のお気に入りはサムイ島と、香港。好きな食べ物はバナナとケーキ。

国際共創学部 脱炭素を実現するのは、誰の役目?

 例えば、もしあなたが部員数たった3名の部活の部長だったとして、部員30名のライバル校の部活と、同じレベルの目標を達成することはできそうでしょうか? 脱炭素の取り組みに関して地方自治の観点から考えると、これと少し似たような状況かもしれません。

 日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すことを宣言しました。この達成に向けては国や企業だけでなく、「地域も主役」であると位置づけられており、各市町村、すなわち各自治体には、実行計画の策定が求められています。自治体にとって難しいのは、この計画を実行するにあたって、「推進」「抑制」「調整」の三役を担わなければならない点です。例えば、企業を誘致し風力発電を推し進めながら(=推進)、風力発電を設置していい場所としてはいけない場所のルールを作り(=抑制)、地元住民から合意を得て(=調整)いかなければいけません。当然、エネルギーのこと、発電のこと、土地の開発のこと、いろいろな専門知識が必要。自然環境を保全しつつ、地域の将来像を具体化し、脱炭素も実現するというように、考えるべきことが多岐にわたります。ある程度規模の大きな自治体であればバランスよく三役をこなせるのかもしれませんが、人口の少ない自治体、つまり自治体職員の少ない地域では、はたして実行できるでしょうか? さらに言うと、自治体には脱炭素の計画のほかにも、男女共同参画や子ども・子育てに関する計画など、各省庁から様々な計画の策定が求められており、その数は500件を超えると言われています。これらの計画策定や実行を、数名の職員で担うのはとても大変です。気候変動という地球規模の課題に対して、「脱炭素」は推し進めるべき重要事項ではありますが、自治体でそれを実行していくには課題があるということです。

 もしあなたが「脱炭素」に関心を持ったなら、環境省のウェブサイトで地方自治体の取り組みを調べたり、自分の住む市町村でどんな計画がされているのか聞いてみたりしてください。世界の課題と地域の課題はつながっています。多面的な視点を持って、課題解決のために行動していきたいですね。

関連ワード

  • 国と地方
  • 国際的課題
  • 地方自治
  • 行政

山谷 清秀 講師

2024年4月から大阪経済大学国際共創学部講師に着任。専門領域は行政学。市民からの苦情に行政はどのように対応すべきかを、制度と運用の両側面から研究している。自治体の主体性についても関心を寄せており、住民や行政職員の“現場感覚”から社会問題にアプローチしている。ラーメンと恐竜が好き。

経営学部 地球環境課題と、わたしの人生設計。 「ESG投資」がどちらにも役立つかもしれない。

みなさんは「投資」という言葉に、どんなイメージを持ちますか? 手を出すとヤバいギャンブル? ずる賢い人が得をするマネーゲーム? も本来の投資の意味とは違います。100年時代とも言われる今、若いみなさんも、将来の生活とそれに必要なお金について考えることが重要です。長い人生を安心して楽しむには、どうしたってお金が必要。将来困らないためには、早めに少しずつ投資を始めることが大切なのです。

私の専門はファイナンスですが、今この分野で注目されているのが「ESG投資」です。ESGとは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の3つの要素のこと。企業が持続的に成長するには、この3つを大切にしなければなりません。ESG投資とは、これらに力を入れている企業にお金を投じることを言います。ここで、今回のテーマ「脱炭素」とファイナンスがつながります。

脱炭素社会の実現には、新しい技術を開発することが必要です。そのためには多くのお金がかかります。そこで、投資家がESG投資、つまり脱炭素に取り組む企業にお金を出すことで、技術開発が進み、脱炭素社会に近づいていきます。技術面ではエンジニアや科学者などの理系分野が力を発揮しますが、文系である経営やファイナンスを学ぶ私たちも、資金面で間接的にその手助けができるという訳です。

「脱炭素という地球規模の問題に対して、投資を通じて誰でも貢献できる」と考えると、投資に対するイメージが少し変わるかもしれませんね。投資にはリスクも伴いますが(これも授業でしっかりと学びます)、経済活動に貢献でき、自分の未来のためのお金を準備する方法でもあります。私の授業では、みなさんに金融リテラシー(お金に関する知識)を身につけてもらい、世界中どこでも通用するファイナンスのスキルを教えています。

世界的な課題に興味がある人、企業や組織の仕組みに関心がある人、自分の将来にお金の知識を活かしたい人には、経営学部の学びがぴったりだと思いますよ。

関連ワード

  • コーポレート・ガバナンス
  • コーポレート・ファイナンス
  • 企業経営
  • 応用ミクロ経済学
  • 日本経済
  • 組織の経済学

佐藤 愛 教授

2023年から大阪経済大学経営学部に着任。専門分野はコーポレート・ガバナンス、コーポレートファイナンス、ミクロ経済学、特に組織と情報の理論。メルボルン工科大学、オーストラリア国立大学、東京大学、南カリフォルニア大学での研究キャリアを持つ。テニスとオペラが好きで、時には鑑賞のため本場(ウィンブルドンやウィーン)まで足を運ぶ。