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【実施報告】人間科学部スポーツ健康コース 卒業論文発表会

2023年02月22日(水)

ゼミの代表者が学びの集大成を発表し、最優秀論文賞を決定

1月28日(土)に人間科学部スポーツ健康コースの卒業論文発表会を開催しました。2~4年のコース生が揃って発表会を行うのは、コロナ後初めてとなります。冒頭では、朝原宣治客員教授による基調講演も行われました。4年生の各ゼミから優秀論文に選ばれた8組が研究の成果をパワーポイントを使ってプレゼンし、その中で最も評価の高かった論文を最優秀論文として表彰しました。
 
 

陸上競技を通じて、朝原氏が得た学びと経験
卒業論文発表に先立ち、オリンピックメダリストであり、本学人間科学部の客員教授を務める朝原宣治氏が登壇。「これからの時代に求められるスポーツ人材とは」と題した基調講演を行いました。高校時代から本格的に陸上競技に取り組み始めた朝原氏は、自分を高めていきたいという思いを強く持ち、どうすればもっと力を発揮できるのかを考えながら競技に励んできたと言います。大学卒業後も社会人アスリートとして競技を続ける朝原氏に大きな影響を与えたのは、ドイツ、アメリカでの留学経験です。
 
「プロフェッショナルとしての知識や技術、考え方を身につけたほか、総合型地域スポーツクラブの先進国であるドイツのスポーツ環境について知見を深めるなど、さまざまな学びを得ました。また、異なる生活や文化、価値観に触れる中で、視野が広がったことも実感しました」
 
競技生活からの引退後は、自身のキャリアを活かした多様な活動を行ってきました。自身が所属する大阪ガスネットワーク株式会社では、運動・陸上の地域クラブ「NOBY T&F CLUB」の運営、大阪ガス陸上部での指導、健康情報の発信などに携わっています。同時に、講演活動や児童・学生を対象としたスポーツ指導をはじめ、アスリート人材としての個人活動も精力的に行い、スポーツや健康、地域活性化に関わる活動を通じて社会に広く関わり続けています。
 
これらの経験を踏まえて朝原氏は、人とのコミュニケーションを大切にし、人から信頼・必要とされる人材となるためのプロフェッショナルなマインド、国際感覚や広い視野を身につけてほしいと学生たちに語りかけます。さらに、スポーツ健康コースで学ぶ学生に向けた言葉として、「スポーツ経験者だけでなく、マネジメントやデータ分析など多様な専門性を持った人がこれからのスポーツ産業を支えていってくれることを期待しています。社会で活躍するために一番大切なのは、情熱だと思っています。加えて、想像と創造の力を持って新しい何かを生み出し、スポーツ界、ひいては日本の将来を支える人材となってほしい」と学生たちを鼓舞しました。
 
 
優秀論文をプレゼンテーション
講演後には、スポーツ健康コースの各ゼミから優秀論文に選ばれた、8組の学生たちによる研究成果が発表されました。概要は下記になります。
 
●卒業論文発表内容(発表順)
「長居公園におけるパークマネジメント」
 相原ゼミ/今出 旦陽、松尾 聡大、塩地 勇太
大阪のさらなる発展につながる企画として、行政・市民・企業が連携して運営するパークマネジメント構想を考察。長居公園を企画対象とし、防災拠点としての活用、新たな施設の導入による公園利用の活性化、公園を中心に居心地がよく歩きやすい街づくりの取組みを提案した。
 
「ハンドボール選手を対象とする異なる方向変換角度における走速度と体力の関係」
 明石ゼミ/則武 正剛、田中 颯
ハンドボールの競技特性を踏まえ、角度の異なる方向変換走の速度及び最大加速度を測定し、体力との関係について検討。角度が高くなるにつれて走行時間が遅延するといった結果を得て、ハンドボール選手の技術向上や怪我・疲労防止などの観点から必要とされるトレーニング内容を示した。
 
「大学男子柔道選手の試合に向けた短期間の減量が身体的、心理的コンディションに及ぼす影響について」
 江藤ゼミ/大隅 天眞、五十嵐 隼
柔道選手を対象とし、試合に向けて減量した者と必要がなかった者の体重、身体組成、血液検査、体力評価、心理的コンディションを調査・比較。結果、筋肉量や栄養摂取状況に有意な差が見られた。階級制競技の減量方法において、科学的根拠を蓄積して競技現場に研究成果を還元することが必要だと考察した。
 
「睡眠時間の変化が運動パフォーマンスと主観的疲労度に及ぼす影響」
 九鬼ゼミ/小西 琉生、兵頭 陽太
研究対象の運動部員を睡眠時間7時間と3時間の群に分け、数種類の運動記録と運動前後の主観的疲労度を測定。主観的疲労度において数値の上昇差が表れたことから、身体的な疲労の蓄積、疲労を感じるまでの時間の早さ、モチベーションの低下など、短時間睡眠が運動パフォーマンスに与える影響を推察した。
 
「コロナ禍における健康遊具利用の考察」
 高井ゼミ/橋本 龍斗
健康遊具の備わった公園での利用者の体験調査を実施。体験者の継続利用への意欲は高く、健康への意識向上に期待が持てることが分かった。定期的な健康遊具を使ったイベントで人々の交流をうながせれば、加齢による身体の衰えのみならず、精神心理的及び社会性の衰えの防止にもつながる可能性が高いと結論づけた。
 
「野球競技人口の減少に関する研究~どのようにして野球を継続する選手と離脱する選手が生じるのか~」
 田島ゼミ/福田 真也
野球競技人口の減少に着目し、競技の継続および離脱に至るプロセスのモデル化を目指した。インタビュー調査により、離脱に至るプロセスでは、居場所(チーム)への不満と野球熱の喪失の2つの要因があることを明らかにしたが、野球特有の要因をさらに解明することを今後の課題とした。
 
「コロナ禍の中、オリンピックは開催して良かったのか」
 半田ゼミ/北野 瑠衣、立住 真秀
世間、アスリート、オリンピズム、学生自身の目線から、コロナ禍で行われた東京オリンピックの開催の是非を検証。見方・立場で開催の是非は変わるが、選手の活躍によって希望や感動が与えられ、コロナ禍であるからこそスポーツのすばらしさが感じられたのではないかと考察した。
 
「スプリントドリルによる疾走速度向上を目的としたトレーニング方法の検討」
 若吉ゼミ/堀戸 智博
陸上競技短距離種目のトレーニングのうち、走り方の動作の技術を反復練習で向上させるスプリントドリルに着目。小学生児童を対象に検証を行い、スプリントドリルを中心としたトレーニングでの疾走速度の向上について調査した。結果、50m走の記録短縮に効果があり、トレーニング回数が多いほど記録が大きく短縮したことを明らかにした。
 
 
8本の論文の中から最優秀論文賞を決定
すべての発表終了後、優秀論文賞として発表者全員の表彰を行いました。さらに、審査の結果、最優秀論文賞に選ばれたのは、江藤ゼミの大隅天眞さん、五十嵐隼さんの論文です。表彰された2人は、「長い時間をかけ、先生からのアドバイスも受け、精一杯取り組んだ結果が評価されてうれしい」と喜びの言葉を述べました。
 
最後に、人間科学部学部長・半田裕教授が登壇。「自分の課題を問い続けてきた長い旅はどうでしたか。研究の成果を2万字超の文字にすることも大変だったでしょう。やり遂げたことが素晴らしいと思います。これから卒業論文に取り組む2、3年生もこの学びを楽しんでほしい」と学生たちに語りかけ、閉会の挨拶としました。
 
今回の論文発表会では、スポーツ・健康に関する多様な研究の発表が行われました。それぞれの学生たちが学びの集大成として真摯に研究に取り組んだことが伝わってきました。聴講した2、3年生にとっても、今後の学びに大きな刺激を与えられた発表会となったことでしょう。

左から江藤准教授、五十嵐さん、大隅さん、八尾教授

最優秀論文賞 学生・指導教員の声
大隅 天眞さん
データ分析や文章作成など何度も検討を重ねた結果、良い研究になったと思っています。卒業論文では、自分たちで考え、課題に対して一つ一つ取り組むことで、意欲的・主体的に学ぶ姿勢が身に付きました。一つのことにじっくりと取り組み、学びを積み重ねていくことの大切さも実感できました。
 
五十嵐 隼さん
1年以上かけて研究に取り組んできました。データ収集の項目が多く、データの整理や分析がとても大変でしたが、その分、さまざまな視点から考察することができました。研究の取り組み方はもちろん、パソコンのスキル、分かりやすく人に伝える力など、卒業論文の取組みを通じて多様な力が身につきました。
 
江藤 幹 准教授
彼らは課題も自分たちで見つけ、主体的に学んでいくという自覚を持って卒業研究に取り組んできました。柔道競技を続けながら卒業研究についても突き詰め、本当に頑張ったと思います。大学生としての視点をしっかりと持って4年間を過ごしてきたのだと感じました。